研究課題/領域番号 |
23580450
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
齋藤 弥代子 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (80367242)
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研究分担者 |
神志那 弘明 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50506847)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 変性性脊髄症 / ALS / L-カルニチン / レボカルニチン / ウェルシュ・コーギー / MUNE / DMスコア |
研究実績の概要 |
H25年度に引き続き、変性性脊髄症(DM)と診断し、研究に組み入れたウェルシュ・コーギーから評価項目のデータを収集した。前年度と比べて症例の病期が進行したため、DMの中期から末期における収集データが増加した。筋周囲径、肢の脂肪比率、動脈血液ガス、およびDMスコアはいずれも症状進行に伴って経時的に変化したため、これらはDMの症状進行度合いの客観的な指標となりうることがわかった。DMスコアにおける検査者間の級内相関係数を求めたが、0.99と高値であり、検査者間の影響が少ない検査であることが示された。LC投与群と非投与群の2群間において、各種臨床症状の発現時期に有意差は認められなかったが、長期(24ヵ月)にわたるDMスコアの経時的変化を比較したところ、LC投与群のほうがスコア値の悪化速度が有意に遅かった。また、LC投与による有害事象はみられなかった。これらから、DMスコアはDMにおける神経機能の変化を示すパラメーターとして有用であり、また今後LCの有効性の検証を目的とした二重盲検試験を実施する価値があることが示された。 運動単位数の推定 (MUNE) はALSの有用なバイオマーカーとして期待されているが、犬ではほとんど実施されていない。前年度は既存の方法にて健常犬でのMUNEの測定を試みたが、本邦の機器の刺激増加幅の問題で、犬では測定できないことがわかった。そこで、今年度は刺激増加幅の影響が少ないF波法にて、神経を多点で刺激する方法を開発し適応したところ、報告のある犬の運動単位数に近似した値を得ることができた。 今後は、組み入れ症例からのデータを引き続き収集し、末期のデータの解析と、死亡までの長期評価を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点では、病気末期や死亡後に収集可能となるデータ量がやや不足している。これは、我々の症例の多くが、過去に報告されている生存期間よりも長期に生存していることが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した研究実施計画に則り、組み入れ症例にて評価項目の測定とLCの投与を引き続き行い、病期末期のデータ収集を測る(齋藤・神志那)。症例が死亡した場合は、病理検査を実施し(加藤・齋藤)死亡例のデータ取集を行う。死亡後の病理検査によって確定診断がついた症例にて、発症から死亡までの縦断的な解析を行い、DMにおける評価項目の有用性とLCの有効性を総括的に評価する。得られた組織を用いて、ALSとの相同性をさらに検証する。学会等で成果を発表し、論文の投稿準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
我々の症例の多くが、過去に報告されている生存期間よりも長期に生存しており、オープントライアル組み込み症例のほとんどが現時点でまだ生存している。そのためそれ以降に実施予定の研究の経費をまだ使用していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
前述した今後の研究の推進方策に則り、症例における各種評価項目測定のための費用、データ保存と解析用の機器や消耗品購入のための費用、データ解析の費用、病理検査のための試薬や器具類の費用、レボカルニチン購入の費用、学会参加費用、研究打ち合わせのための費用、そして成果発表のための費用に使用する予定である。
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