研究課題/領域番号 |
23580452
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大井 俊彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40223713)
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研究分担者 |
田口 精一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70216828)
松本 謙一郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80360642)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオマス / バイオプラスチック / 微生物工場 / バイオリファイナリー |
研究概要 |
高機能バイオプラスチックを合成できる反応集積型の「微生物工場」は、バイオマスからのグルコースを選択的に資化して駆動することが出来るが、現状ではバイオマスの糖化プロセスではグルコース以外の不純物の副生は不可避である。その中でも生育阻害物質に対する耐性が弱いことからバイオマス糖化物中に複製されるルルフラールやその関連化合物に対する「微生物工場」の耐性が望まれる。本年度はルテニウム担持触媒を用いたセルロース加水分解物中に含まれるフルフラールやその関連化合物等が微生物工場である大腸菌の生育を阻害するので、これを回避するために、主要な阻害物質である5-メチルフルフラール(5-HMF)は予備実験において大腸菌の生育は阻害するが、ポリマーの生産には大きな影響がないことがわかったので、5-HMFに耐性を持つ大腸菌を探索した。その結果、LS5218株は3g/Lまではほとんど生育に影響しないことがわかった。この5-HMF耐性はセルロース加水分解物中に含まれる5-MF濃度とグルコース濃度からポリマー生産条件での最適グルコース濃度であっても生育に影響しないことから、セルロース加水分解物を炭素源としてPHAの生産を行ったところ、添加したプロピオン酸の濃度に依存した、3-ヒドロキシ吉草酸を含むPHAが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はバイオマス糖化プロセスとバイオプロセスである「微生物工場」を良好に連動させるインターフェースの問題点を解決することについて明らかに出来たことに加え、生育阻害の主要化合物が5-メチルフルフラールであることを明らかにした。さらにこの5-メチルフルフラールに対する毒性を回避するために「微生物工場」の宿主となる大腸菌主を検索し、LS5218かぶが、比較的高い耐性を有することを見出すことが出来た。 次にLS5218株を用いて生育阻害物質を含むバイオマス加水分解物を用いてポリマー生産を行ったところ、グルコースとほぼ同様にポリマーを生産できることを明らかにした。以上の結果は、平成23年度の研究計画を達成したこととなる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はヘミセルロースの主成分である難資化性キシロースからも、効率よくポリマー生産が可能となるような微生物工場を創成する。宿主大腸菌にはキシロース資化能を持つことが知られているが、この資化能はグルコースにより強く抑制される。そのため、宿主大腸菌が本来保持しているキシロース代謝関連酵素遺伝子発現の抑制を解除することで効率的な資化能を付与する。キシロースは2種類の代謝酵素(XylA, XylB)により代謝され、ペントースリン酸経路を経て基幹代謝系に合流することでバイオプラスチック生産に利用できる。これらの酵素遺伝子は2種の制御因子(XylR, AraC)により発現が抑制されていることから、課題1で選抜された阻害物質耐性大腸菌宿主に対して、これら制御遺伝子の破壊株を作成する。破壊株の選択にはジオキシー現象を応用し、キシロース資化に伴う増殖速度の差を指標に変異株を選抜するスクリーニング系によって獲得する。大腸菌を変異処理した大量の変異株ライブラリーからの破壊株のスクリーニングは2ステップの選抜で行う。一次スクリーニングではキシロースと微量のグルコースを炭素源として含む培地中で生育させ、優先的に増殖してくる変異株を集積する(図2参照)。二次スクリーニングではキシロースを炭素源として一次選抜された変異株をプレート上で培養し、増殖が早いものをコロニー形成速度により選抜することで獲得する。期待されるほど、資化能が向上しない場合には、キシロース代謝酵素遺伝子を新たに導入することで、効率的なポリマー生産を目指す。最終的にポリマー生産効率が高く、かつ糖化物中の含有キシロースをほぼ完全に資化出来る欠損変異株の創成を目標とする
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究が非常に順調に進んだため、想定を大幅に下回る経費の支出ですんだ。次年度は研究計画にしたがって遂行するために試薬などの消耗品の購入を中心に研究費を使用する。加えて、平成23年度に得た研究成果を発表するために、国際学会および国内学会での発表を行うための成果発表旅費、加えて国際専門誌への投稿に関わる経費に今年度の未使用額を使用する予定である。
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