研究課題/領域番号 |
23580452
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大井 俊彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40223713)
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研究分担者 |
田口 精一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70216828)
松本 謙一郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80360642)
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キーワード | バイオプラスチック / バイオポリエステル / 非可食バイオマス / 微生物工場 / バイオマス / 糖化 / 乳酸ポリマー |
研究概要 |
非可食性バイオマスの糖化物に含有するキシラン由来の単糖であるキシロースを効率よく資化し、バイオプラスチックを生産できる微生物工場の開発を目指した。多くの大腸菌宿主からキシロース資化性を示しかつ、生育の比較的良い菌株を選択した。初めに、選抜した大腸菌株をP(3HB)生合成遺伝子群を持つ発現プラスミドを用いて、選抜した大腸菌株を形質転換し、ポリマー生産を検討したところ、ギ酸合成遮断株であるBW0885株が高いP(3HB)生産性を示した。さらに乳酸ベースポリマー生産に本大腸菌株を用いた場合でも、比較的高いポリマー生産性を示すことが確認された。生産し菌体内に蓄積したポリマーをクロロホルムで抽出し、有機溶媒分別で精製した。得られたポリマーをNMR分析で構造解析およびメタノリシス後にGC-MSによる組成分析を行った。その結果、生産したポリマーはP(LA-co-3HB)コポリマーであることが確認された。さらにバイオマス糖化物での利用を想定し、グルコースとキシロースの混合糖を用いてポリマーを生産させた場合でも、同様に乳酸ベースポリマーを生産できることが分かった。生産した両ボリマーの組成分析の結果から、キシロースのみを炭素源にしてポリマーを生産させた場合のほうが、グルコースを含む混合糖を用いた場合の方がポリマー中の乳酸分率が高くなることが明らかとなった。以上の結果から、キシロース易資化性の大腸菌を宿主として、ポリマー生産に適応できる微生物工場の開発に成功した。さらにこの生産系においてはグルコースとキシロースを含む混合糖液を用いた場合でも効率よくポリマー生産ができたことから、非可食のバイオマス糖化物からでもバイオプラスチックを生産できる可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度に計画していた「キシロース資化性微生物工場の育種」は、選抜した大腸菌を宿主として効率よくP(3HB)、およびそれ以外のバイオプラスチックをも生産することができたことから、概ね順調に年次計画を達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はバイオマス由来のグルコースとキシロースの混合糖を炭素源に、効率よくバイオプラスチックを生産する微生物工場を、大腸菌を宿主として新機能を付加することでさらに生産背の高い宿主を開発していくとともに、バイオマスからの不完全糖化物であるセロルロース由来オリゴ糖を資化して、バイオプラスチックを生産可能な微生物工場も並行して開発していく。特に乳酸ポリマーの生産に注力する。得られたバイオプラスチックの構造や物性を検討して、純粋糖及びその混合糖とポリマーの生産と品質を比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に計画していた阻害物質に対する毒性回避に効果的な大腸菌宿主の選定および難資化性糖質であるキシロースの資化能付与に関して、当初想定していた大腸菌宿主の選抜等に関して予想以上に順調に進んだため研究費の執行額が抑えられた。 加えて、本年度の実験計画で予定していた微生物工場のキシロース資化能の付与に関しても微生物工場に利用可能な大腸菌宿主に関しては概ね順調に進行したが、最終的に必要となる糖の消費とポリマー生産の相関を取ることができなかった。理由としては既存の糖分析装置の故障により糖消費が測定できなかったためである。そのために必要な試薬類などに研究費を執行できなかったが、平成25年度初頭に装置の修理が完了するので、今後順調に分析可能となる.そのために次年度では当初計画に加えて、試薬類の購入や得られたポリマーの分析に研究費を充てる予定にしている。 平成25年度は、バイオマス糖化の際に副生されるセルロース由来のセロビオースを主とするオリゴ糖を効率よく資化し、かつポリマー生産が可能な宿主の改造を行うことに加えバイオマス由来のグルコースとキシロースの混合糖を用いたポリマー生産を予定している。検討項目としてはセロビオースを菌体内に効率的に取り込める宿主の選抜と、その資化能の付与である。そのための遺伝子工学関連試薬、培養試薬、ポリマー構造解析の試薬や機器使用料、物性解析のために必要な試薬類などにも研究費を使用する予定にしている。
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