研究課題/領域番号 |
23580459
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
岩崎 貢三 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (40193718)
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研究分担者 |
田中 壮太 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (10304669)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ベトナム / ハノイ / 廃棄物処分場 / 水銀 / 農耕地 / 河川底質 / 環境汚染 |
研究概要 |
ベトナム・ハノイの廃棄物処分場周辺では,重金属による河川や農耕地土壌の汚染が懸念されている.無分別のまま埋め立てられた廃棄物には,蛍光灯なども含まれることから,有害性の高い水銀による汚染が拡大している可能性もある.そこで本研究では,廃棄物処分場周辺の河川及び農耕地における水銀による汚染状況を明らかにし,安全な食料生産のための環境管理対策に資することを目的とする. Soc Son県Nam Sonに位置する廃棄物埋め立て処分場周辺の4 km×5 kmの区域で予備調査を実施した結果,廃棄物処分場近くを流れるCau Lai川の底質および川沿いの農耕地で重金属含量が高い傾向が認められた.この結果に基づき,平成23年度は,Cau Lai川に沿って,廃棄物処分場から異なる距離の地点を100~200 m間隔で選定し,河川底質を採取した.また,Cau Lai川沿いで廃棄物処分場よりも上流に位置する2圃場,下流に位置する1圃場で,表層土壌および作物(サツマイモ地上部)を採取した.その結果,廃棄物処分場よりも上流に位置する地点の河川底質中の全水銀濃度は,N.D.~0.066 mg kg-1であったのに対し,下流に位置する地点では,0.122~0.782 mg kg-1の結果が得られた.一方,農耕地表層土壌および作物については,水銀による汚染は観察されなかった.しかし,今回のサンプリングでは,廃棄物処分場直近の圃場での試料採取を行えなかったため,今後,作物中の水銀含量の分析を含め,再検討する必要がある.なお,採取した試料中のメチル水銀含量については,現在,ECD-GC法による分析を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画は,「ハノイ近郊の廃棄物処分場周辺を流れるCau Lai川沿いで,廃棄物処分場から異なる距離にある水田および畑を100~200 m間隔で選定し,表層・下層土壌,作物を採取するとともに,いくつかの圃場において層位別に土壌試料を採取する.また,周辺の水系についても調査し,農業用河川水,底質土,灌漑水,田面水を採取する.ECD-GC分析によるメチル水銀分析法を確立し,採取した試料について水銀全含量およびメチル水銀含量を分析する.作物に関しては,部位別の含有率を明らかにする」となっている.ほぼこの計画通り,Nam Sonに位置する廃棄物処分場周辺の河川底質,農耕地土壌,作物,河川水の採取を行い,水銀含量の分析を実施した.得られた結果は,予備調査の結果を裏付けるものであった.作物の採取に関しては,3圃場において,サツマイモ地上部を採取し,水銀分析を行ったものの,汚染は確認できなかった.当初予定した対象圃場で休耕状態であった地点があり,最も汚染が予想された圃場での作物試料採取ができなかったが,平成24年度の調査で補いたい.また,メチル水銀の分析に関しては,今回購入したECD-GCによる分析手法を確立し,分析を進めている.以上のことから,本研究は,おおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,前年度に採取した試料中のメチル水銀含量を分析を継続するとともに,水銀の汚染経路を明かにすることを目的に,選択溶解-逐次抽出法を用いて,土壌・底質中の水銀を,交換態,マンガン酸化物吸蔵態,有機物吸蔵態,非晶質・結晶性鉄酸化物吸蔵態,硫化物態,残さに分画し,水銀の形態別存在量を分析する.これに加え,移動性が大きく有害性の強い画分を評価するため,2 % HCl + 10 % エタノール抽出法などを検討する.また,前年度に試料採取できなかった廃棄物処分場直近の圃場での土壌,作物採取を目的に,再度現地でのサンプリングを実施する.同時に,Cau Lai川には,ホテイアオイの生息が認められたので,河川水とともに本植物を採取して水銀分析を行い,水銀汚染に対する指標植物とならないか検討する.一方,土壌・底質中の水銀含量が著しく高いことが確認された場合には,大気中の粉塵に水銀が含まれている可能性を調査するために,大気のサンプリングを行い,水銀濃度の分析を試みる.平成25年度は,試料の分析を継続するとともに,得られた結果に総合的解析を加え,水銀の汚染経路の解明等を行う.また,ベトナムで環境セミナーを開催して研究成果を報告し,対策を提案する.そして,安全な食料生産のための環境保全に関する正しい認識を定着させる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の計画に基づく経費執行について,4月に支払すべき経費が残っているため,次年度使用額が存在するように見えるが,実際には全額を執行予定である.そのため,次年度の計画は,当初の計画通り進める予定である.
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