【課題1】アスパラガスに発生する茎枯病の発生要因と育種対策 近年の温暖化現象により、福岡県ではアスパラガスの茎枯病が大発生したため、平成26年度において、その原因を究明すべく研究に着手した。アスパラガス茎枯病菌Phomopsis asparagiは、土壌伝染性植物病原菌類の一種であり、アスパラガスでは病害抵抗性の品種がまだ確立されていない。はじめに、病原菌の侵入様相について、アスパラガスの茎上に菌を接種し、顕微鏡観察による病原菌の侵入および植物組織への進行に関する観察を行った。その結果、25℃、接種48時間内で胞子がアスパラガスに付着器を形成し、植物組織を貫通しながら内部に進行していることを観察した。また、黒色の病斑内部では、植物細胞にストレスを与えると思われる物質を分泌している場面が観察された。さらに、本病に耐性・抵抗的はアスパラガスの体内には、内生菌と思われる内在菌類が観察された。 【課題2】ベトナム国中山間地区における野菜・果樹病害の被害調査 平成26年9月にベトナム国タイバック大学を訪問し、ベトナム-ラオス国境付近の中山間地区において、イネおよび蔬菜類に発生する植物病害の野外調査を実施した。本調査では、タイバック大学農学部植物保護学講座の教員および大学院生と共同で実施した。水田では、イネ紋枯病、イネいもち病、イネ白葉枯病の発生が著しく、灌漑施設が整っていない箇所が多く、病害の蔓延化の一因となることが示唆された。また、トマト畑では、疫病やうどんこ病、根腐病などの土壌病害が顕著であった。ジャガイモ畑では疫病およびそうか病、トウガラシ畑では細菌由来の萎凋病、ウイルス病などの被害が観察された。また、コーヒーやマンゴー、ライチなどの果樹では、虫害による被害が多発しており、ウイルス病を媒介する昆虫類の種類もまた観察された。
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