研究課題
種子は高等植物の主要な散布手段であり、水分含量を低く保ち代謝活動も極端に抑えることであたかも物質のような状態になって優れた環境耐性を獲得する。3万年前の古代種子を再生させた報告もあり、通常の種子でも条件さえ良ければ数年間は発芽能力を維持できる。そのため移動手段をもたない植物が生育に適さない環境を回避するのに秀でた手法であり、陸上に進出した植物に繁栄をもたらした大きな要因であるといえる。種子は将来の植物体となる胚を含んでいるが、過去の研究において種子に特徴的な細胞構造を見出しており、特に遺伝情報が刻まれたDNAが存在する細胞核では特殊な構造変化やクロマチン成分を検出している。これらの特徴は発芽後速やかに消失して脱水などに対する環境耐性も失われるので、植物種子にはゲノム機能を安定に維持する特別なしくみがあると想定した。細胞核には長大なDNAが納められており、クロマチン構造の基本単位であるヌクレオソームを構成するヒストンへの様々な修飾反応が核の動態変化に強く影響する。生命科学分野での質量分析装置の普及によりタンパク質成分のアミノ酸配列の同定や、翻訳後に受けた修飾反応を直接的に検出することが可能になってきたので、シロイヌナズナ種子を実験材料として調整したクロマチン成分に対して高感度質量分析を施すことで、植物種子が示す特徴的な核構造と細胞機能との関係を検証した。種子クロマチンには特定のヒストン亜種の他に機能不明の超塩基性タンパク質や種子機能と深く関与するPEBPタンパク質が豊富に含まれることが分かった。またユビキチン化された特定のヒストン成分やそれらの分解装置と予測されるタンパク質群を見出しており、突然変異体を用いた既知の分子遺伝学的な学術情報を支持する実験結果を取得できた。今後は得られた分子情報を利用して休眠維持、発芽制御、寿命決定などの植物種子の機能性との関連づけが必要となる。
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