本研究の目的はリンドウ越冬芽の耐寒性低下と相関するW14/15遺伝子バリアントの機能、遺伝様式及びクロマチン構造を解析して越冬芽の耐寒・越冬機構を解明することである。平成25年度は1. W14/15遺伝子の機能解析、2. W14/15遺伝子の発現とクロマチン構造変換との相関についての解析を行ない、以下のことを明らかにした。 1. W14/15遺伝子の機能 前年度までの交配実験から、W15a型アレルが越冬生存に不可欠であること、W14b型は越冬率低下にドミナントに働くことが示唆されていた。今年度は本遺伝子の発現を抑制することにより機能を直接解析した。リンゴ小球形ウイルス(ALSV)ベクターを用いてW15a遺伝子の発現を抑制した個体について、越冬芽の形成率と越冬後(5℃以下、約4ヶ月)の生存率(萌芽率)を調べた。この解析から、W15a型の発現は越冬芽の形成には影響しないが、越冬生存に直接関与することを明らかにした。 2. W14/15遺伝子の発現とクロマチン構造変換との相関 W14b型が越冬率低下に働く理由を解明するために、越冬生存率の低い品種PW(W15a/W14b)と高い品種LA(W14a/W14b)で各対立遺伝子の発現を解析した。その結果、両品種間で萌芽期前後の各対立遺伝子の発現比が異なっていた。PWでは両対立遺伝子はほぼ均等に発現していたが、LAではW14b型対立遺伝子の発現はほとんどなかった。この実験から、W14b型アレルの発現が越冬率低下にドミナントに働くことを確認できた。対立遺伝子による発現の違いをクロマチン構造から解釈するために、昨年度に引き続きシトシンメチル化レベルを解析した。その結果、メチル化の高低レベルは時期により変化すること、対立遺伝子型によって変化の時期がずれることが判明し、これによりW14/15対立遺伝子が時期特異的に機能することが示唆された。
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