カルシウム依存性R型レクチンで、溶血活性を有するCEL-IIIについて、その溶血活性等の向上およびカルシウム依存性を改変した高機能化CEL-III分子の構築を目的に研究を行った。まず、昨年度の研究結果を参考にしてCEL-III全長を用いた変異体作製による溶血活性の向上を試みた。具体的には、CEL-IIIのサブドメイン1γ、2α、2γの糖結合部位のアミノ酸残基のうち糖とのスタッキングに関与するアミノ酸残基Tyr134(1γ)、Tyr181(2α)、Trp269(2γ)を類似のアミノ酸(Phe、His、Trp、Tyr)に置換した変異体を作製し、その溶血活性等について検討した。その結果、Trp269の他アミノ酸への変異は溶血活性の低下がおこったが、Tyr134のHisへの変異(Y134H変異体)、Tyr181のPheまたはTrpへの変異(Y181FおよびY181W変異体)では溶血活性がそれぞれ、1.1倍、2.0倍および1.3倍向上していることが明らかになった。以上の結果より、2γ以外のサブドメインにおいて、糖とのスタッキングに関与するアミノ酸残基への変異導入によりCEL-IIIの溶血活性が向上することを確認することができた。一方、カルシウム依存性を改変したCEL-III分子構築のため、ミミズ由来カルシウム非依存性R型レクチンEWL(259aa)とCEL-IIIの小孔形成ドメイン(148aa)からなるチオレドキシンタグ付きキメラ蛋白質発現系を構築した。発現した蛋白質(Trx-EWLCEL3PFD)はCEL-III変異体と同様に精製を行い、その活性について検討した。その結果、CEL-IIIとは異なり、Trx-EWLCEL3PFDはEDTA存在下で(Ca非依存的に)赤血球を凝集することができたが、検討した濃度範囲では溶血活性をほとんど示さないということが明らかになった。
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