研究課題
本年度は、新規脱粒性遺伝子の座乗する染色体領域を明らかにするためにQTL解析を行った。昨年度に作出したF1植物を自殖させたF2植物(約300個体)について、前年度に設計した開花期判別マーカーを用いて遺伝子型の組み合わせから開花期を予測した。晩生と予測された系統については短日処理を施し、8月中旬に温室にて開花を誘導した。これらのF2分離集団の各個体において各植物体の開花日を記録し、ピーク開花日から25日目に脱粒強度(各2穂25粒 合計50粒)についてデジタルフォースゲージを用いて測定した。続いて、各植物体について、ゲノム領域をほぼカバーする180のマイクロサテライトマーカー座の遺伝子型を明らかにし、これらのマーカー座に関する連鎖地図に基づいて、解析ソフト(WinQTL Cartographer 2.5)を用いて脱粒性に関与するQTL領域の同定を行った。その結果、有意な新規QTLをイネ第3染色体に検出することができた。このQTLはこれまでに何度か弱いQTLとして報告はあるが、栽培種の遺伝背景ではその効果が明確に出ないことが報告されていたことから、本研究において野生種の遺伝的背景で脱粒性の評価を行った利点が明らかとなった。また、交雑に用いた系統と新規脱粒性遺伝子座の有無による離層状態を詳細に観察するために、離層形成部位の組織切片を作製した。野生種と栽培種、並びに非脱粒性遺伝子導入系統をコントロールとして比較したところ、新規脱粒性遺伝子の有無によって、離層形成に有意な差が同定された。さらに、来年度の新規脱粒性遺伝子のマッピングに向けて、NILの作出、分離集団の作出も行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り円滑に進んでいる。QTL解析では、計画で予想した新規脱粒性遺伝子座を決定することができた。また、それらの遺伝子座の有無による離層形成に有意な差を同定し、次年度のマッピング、NIL作出に向けての材料作出も順調に進行した。
同定したQTLを持つ系統が有意に脱粒強度を変化させるかについて、平成25年度に後代検定を行い再評価する。F3植物では遺伝的背景が均一でないことが予測されることから、並行して連携研究者がこれまでに作出した栽培種(日本晴)に野生種のO. rufipogonを2回戻し交雑させた144のBC1 F1系統(野生種の遺伝的背景)、ならびにその後代の中から目的の遺伝子座をヘテロで持つ系統を選抜し、BC2F2集団を展開する。さらに、この領域をヘテロで持つ植物の自殖種子由来の約5000個体からなる集団を用いて、新規遺伝子近傍の高密度分子連鎖地図を作製し、関与遺伝子の絞り込みを行い、将来的な遺伝子単離の足がかりとする。
新規脱粒性遺伝子座の同定のために行うマッピングでは多個体の遺伝子型判別が必要となる。物品購入費の大半はPCRプライマー、PCR関連試薬、電気泳動関連試薬の消耗品費に充当する。
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