研究課題/領域番号 |
23580476
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
藤木 司 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (00420612)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞老化関連遺伝子群 / マイクロアレイ / hTERT遺伝子 / EBV-B細胞 / shRNA |
研究概要 |
加齢に伴う免疫力の低下(免疫老化:immunosenescence)に関する分子基盤および作用メカニズムの解明を目指し、加齢に伴うBリンパ球における遺伝子発現と加齢性疾患についての網羅的解析を行った。 高齢者および若年者から取得したBリンパ球におけるmRNA発現解析を行うため、約34,000種類の転写産物を搭載したAgilent社 Whole Human GenomeオリゴDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行った。マイクロアレイデータへのノイズを軽減するためにBリンパ球を回収後、磁気ビーズ細胞分離法(MACS)により死細胞の除去を行いサンプルに供した。遺伝子発現強度の統計解析を行い相対的なスコア比較により加齢に伴い発現の増加する遺伝子群、加齢に伴い発現が減少する遺伝子群を抽出した。加齢に伴い発現の減少する遺伝子群として、重鎖および軽鎖抗体遺伝子(19遺伝子)、白血病関連因子(3遺伝子)、腸管免疫抗体産生因子(1遺伝子)の関与が明らかとなった。発現の増加する遺伝子群として、免疫グロブリン重鎖関連遺伝子(4遺伝子)、脂肪組織発達関連因子(2遺伝子)、神経記憶関連カルモジュリン結合因子、ヒストンクラスター関連遺伝子、LDL(low density lipoprotein)スカベンジャー遺伝子、結腸直腸ガン転移関連因子等(各1遺伝子ずつ)の関与が明らかとなり、加齢性疾患との関連性を示唆する可能性のある多岐にわたる遺伝子群に変化が観察された。現在、アノテーションデータベースを利用した加齢性疾患との関連性についてシグナル経路についてのクラスタリングを行っている。絞り込みの完了した時点で、加齢に伴い発現の減少する遺伝子群については強制発現系を施し、増強する遺伝子群についてはshRNAによる発現干渉による老化の表現型への影響について検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定に沿って細胞老化評価系を構築後、種々のストレス因子に対する細胞老化への影響について検証を行うことで現在種々条件検討を行っている一方、加齢に伴う免疫老化の原因遺伝子候補について網羅的解析を行う予定に関しては概ね順調に推移していると考えられる。リンパ球をはじめとする免疫細胞特異的な細胞老化評価系に関してはインセルアナライザー等を利用した1細胞解析系の構築など完全な構築には到っていないことからすべてが順調とはいかないまでも、免疫老化と加齢性疾患の原因探索に対する導入としては概ね順調であると考えている。また加齢に伴うhTERT発現の低下と加齢性疾患をはじめとする様々な疾病表現型に対する影響について検証するツールとしてレトロウィルスを用いたshRNA導入によるhTERT発現抑制細胞株およびhTERT強制発現株を構築している点はクローニングに関して多少の遅れはあるが概ね順調である。強いて計画において課題と言えるのは、それぞれの遺伝子発現研究の遂行が困難となった場合の対策については他の免疫系細胞(マクロファージやTリンパ球など)を用いた計画を考えているが、それらについての細胞株や培養環境を整えるための準備、構築が今後の課題と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策としては、マイクロアレイによる網羅的解析より得られた免疫老化関連遺伝子候補群について、その機能と細胞老化表現型へ与える影響に関してそれら遺伝子の強制発現株、発現抑制株を取得し検証を行う。また、それら候補遺伝子群に関してデータベースによるシグナルネットワーク解析の結果より得られる疾病発症につながる遺伝子クラスターカスケードについての解析を行う。またリンパ球における細胞老化評価系において詳細な条件検討を施しインセルアナライザー等の1細胞解析技術の導入によるリンパ球老化特異的ガラクトシダーゼ活性評価系を構築する。また、様々な加齢性疾患の原因と考えられる炎症性ストレス、酸化ストレスに対する免疫老化表現型に対する影響について検証を行うためにリンパ球細胞老化評価系を用いた検証を行う。種々ストレスに対するストレス性MAPKp38活性をはじめNF-kB等のストレス応答性マーカーについても確認をすると共にMHC class I分子発現、hTERT発現に関してもリアルタイムにモニタリングを行い、免疫系細胞(マクロファージ、T細胞など)を用いた細胞老化に係わる検証系の確立を目指す。今後、さらに様々な炎症ストレスや酸化ストレスなどと加齢疾患、hTERT発現抑制との関連性について検証を試みた後、様々なストレス性因子の関与とその原因遺伝子の候補について絞り込みが出来た場合、モデル動物を用いた解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究においては(平成24年度分)、消耗品経費として細胞培養試薬類(血清、培養液、栄養因子、サイトカイン)200千円、遺伝子工学試薬・フローサイトメーター解析用抗体(細胞染色試薬30千円、遺伝子導入試薬50千円×2、定量PCR関連試薬20千円×10、細胞表面抗原解析用抗体30千円×2、マイクロアレイ関連100千円)細胞培養プラスチック類(培養皿500枚100千円、ピペット500本100千円)研究成果発表のための国内旅費は4回程度を予定し200千円、英文校閲費用としての謝金は、2.5千円×20ページとして50千円、また、研究成果発表費用である学会誌投稿料として30千円×2(60千円)報分を計上した。
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