研究課題/領域番号 |
23580476
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
藤木 司 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (00420612)
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キーワード | 免疫老化 / TERT / p38 |
研究概要 |
免疫老化における老化関連遺伝子の網羅的解析により抽出した遺伝子群についてその機能と加齢に伴う変化について継続して検証中である。細胞老化評価系の構築について、これまでに高齢者より取得したBリンパ球をEBウィルスにより不死化した細胞株において、細胞老化に対してSenescence Associated-β-ガラクトシダーゼ活性 (SA-β-gal活性)を指標とした検証系に用いた。C12FDGlacZ基質を用いたFITC蛍光標識によりフローサイトメーターを用いて条件検討を行ったが、加齢とSA-β-gal活性の相関性を得られるにいたっておらず、更なる条件検討と共にSASP(Senescense-associated secretory phenotype)などの指標についても導入することを検討している。その上で抗原提示機能回復についてHLA-DR以外の分子DQ、QAに関するMHC class II抗原発現強度、発現パターン解析を行うと同時に、B細胞活性化マーカー(CD25、CD30、CD38、CD69)の発現解析を行うこととする。hTERT高発現細胞株およびノックダウン細胞株の作製に係わるレトロウィルスベクター(pBABE-puro)へのhTERT遺伝子およびhTERT遺伝子ターゲットshRNAオリゴヌクレオチドの組換え、EBウィルスにより不死化した高齢者および若年者由来B細胞へ導入し高発現安定株を作成する。また恒常的な発現抑制の為のshRNAオリゴヌクレオチドを組み込んだベクター構築が完了した。現在、EBウィルス不死化B細胞へ導入し、セレクションおよびクローニングを継続して行っている。hTERT発現量に伴う細胞老化表現型への影響についての検証については、薬剤選択によるクローニングの後、限界希釈法によるシングルクローンへの株化とそれぞれの株をライブラリー化について作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに高齢者および若年者から取得したBリンパ球におけるmRNA発現解析を行うため、約34,000種類の転写産物を搭載したAgilent社 Whole Human GenomeオリゴDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析により得られたデータをもとに加齢に伴い発現の増加する遺伝子群、加齢に伴い発現が減少する遺伝子群を抽出した。これらの結果から加齢性疾患との関連性を示唆する可能性のある多岐にわたる遺伝子群に変化が観察された。現在、アノテーションデータベースを利用した加齢性疾患との関連性についてシグナル経路についてのクラスタリングを行うと共にその発現と免疫老化表現型との関連性について、上述の遺伝子導入系による遺伝子過剰発現および発現抑制による影響について検証を行うこと目的としている。これらに点については、遺伝子組換えによる発現ベクターの構築まで完了している事からある程度の達成度が得られていると思われる。一方、細胞老化評価系の構築については、その条件設定に係わる行程において加齢との相関を示すデータを得る上で困難な状況が存在しており、更なる条件設定を検討すると共に評価に関する指標について再検討を要する必要性があると思われる。その他、細胞老化を規定する事が知られているhTERT遺伝子発現調節に係わる遺伝子導入ベクターに関しては組換えが完了している事から今後はその影響について継続して検証を試みる事を目的として推進する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について、細胞老化に関わる評価系についてこれまでの正常線維芽細胞やガン細胞などにおける特に接着系細胞で得られたSA-β―ガラクトシダーゼ活性に基づく評価法が機能しないことについては更なる条件検討が必要と思われる。一方、近年の細胞老化に関連する研究や学会発表などにおける細胞老化評価系におけるSA-β-ガラクトシダーゼ活性と老化表現型との相関性が見られないとの報告があるため、評価に関わる指標をSASP(Senescense-associated secretory phenotype)について導入し、検証する方向で検討する。また、老化関連遺伝子と細胞老化表現型に関する検証については引き続きin vitroにおける候補遺伝子の発現動向との相関性について検証を行っていくと同時に免疫に係わるMHCクラスIIをはじめとする因子の発現との関連性についても検証を行っていく予定である。また、現在、老齢マウスを準備中であり若年マウスと老年マウスとのin vivoでの候補遺伝子動向およびTERT遺伝子発現の関連性についても検証を試みる予定である。さらに、ストレス応答因子との関連についても、in vitroではBリンパ球以外の細胞株を用いた免疫老化関連因子との関係性についてフローサイトメーター、インセルアナライザーを用いた1細胞内リアルタイム解析を導入して検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究においては(平成25年度分)、消耗品経費として細胞培養試薬類(血清、培養液、栄養因子、サイトカイン)300千円、遺伝子工学試薬・フローサイトメーター解析用抗体(細胞染色試薬100千円、遺伝子導入試薬50千円×4、定量PCR関連試薬20千円×10、細胞表面抗原解析用抗体50千円×4、SASP(細胞老化関連分泌表現型因子測定関連抗体50千円×2)細胞培養プラスチック類(培養皿500枚100千円、ピペット250本50千円)研究成果発表のための国内旅費は3回程度を予定し150千円、英文校閲費用としての謝金は、2.5千円×20ページとして50千円、また、研究成果発表費用である学会誌投稿料として25千円×2(50千円)報分を計上した。
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