研究概要 |
平成23年度の研究実施計画に基づいて、水素化ジイソブチルアルミナム(DIBALH)以外にRed-Al, AlH3, AlHCl2, LiAlH4, LiAlH(OtBu)3 に関して、チオクロマン-4-オン オキシムを基質として還元的環拡大反応の比較研究を行った。その結果、水素化ジクロロアルミニウム(AlHCl2)において、DIBALHと同等の収率で環拡大転位生成物を与えることを見いだした。これは、試薬のルイス酸性の度合いが反応収率に影響を与えたものと思われる。そこで、この試薬をさらに5種の基質に対して適応したところ、溶媒をCPMEに代えた場合、芳香環に隣接した位置に窒素原子を有する複素環化合物が80%以上の高収率で得られることを見いだした(論文投稿中)。その反応機構は、DIBALHの反応と同じくヒドロキシルアミン残基およびフェノニウムカチオン中間体(三中心遷移状態)を経由する段階的な反応で進行するものと考えている。次に、オキシムが分子内に二個存在する化合物に関して転位反応を試みたところ、中程度の収率ながら、いっきに5員環から7員環へ n+2員環に転位した化合物が得られた(未発表)過去に報告された転位反応では、n+1員環に転位するが、今回行ったn+2員環への環拡大転位反応は新規であり実例が存在しない。さらに、ビシクロ化合物の立体的な転位反応も検討した。即ち、カンファーあるいはノルカンファーのそれぞれのオキシム体からDIBALHによる3次元的な転位反応を試みたところ、約40-50%の収率で目的の含窒素ビシクロ化合物が得られた(未発表)。このように今年度は、実施計画をほぼ達成できたと思えるが、未発表分に関しては次年度以降に実施例を増やすことにより発表する。一方、海外での招待講演(米国カンサス州立大学およびチエコ国立アカデミー)で、本研究テーマの一部の講演を行い好評であった。
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