研究課題/領域番号 |
23590001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長 秀連 東北大学, 薬学研究科(研究院), 客員教授 (40511910)
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キーワード | 水素化ジイソブチルアルミナム(DIBALH) / 水素化ジクロロアルミニウム(AlHCl2) / DIBALHによる還元的環拡大反応 / 転位反応 / 含窒素複素環化合物 / オキシム / 17-beta HSD 3 inhibitor / URAT-1 inhibitor |
研究概要 |
平成23年度以来、水素化ジイソブチルアルミナム(DIBALH)を用いたオキシムおよびヒドロキシルアミンの環拡大転位反応によって、窒素原子が芳香環に隣接した芳香族二級アミン体が位置選択的に得られることを、またその反応機構を明らかにしてきた。次いでDIBALH以外にRed-Al, AlH2Cl, AlHCl2,などの還元試薬を用いた転位反応も検討した。それらの研究を継続して24年度にはこれらの追加実験による実施例追加を行った。その結果、AlHCl2もDIBALHと同程度の選択性と高収率で目的の転位成績体を与えることを明らかにした。その成果を化学雑誌Moleculesに投稿して受理された。次いで、医薬品候補化合物の合成への応用研究を行った。痛風治療薬としての可能性が期待される高尿酸血症治療剤であるヒト尿酸トランスポーター(URAT-1)阻害剤の合成を目指し、製薬企業の既存法とは異なる本法によって合成を行うことができた。即ち、対応するオキシムからの転位反応によって得られた3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジンから一工程で目的化合物を簡単に得るという方法である。また、もうひとつの応用例として、前立腺がん治療剤候補化合物である17ベータヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ タイプ3(HSD3)の阻害剤である。珍しいテトラヒドロジベンゾアゾシン骨格を有するこれらの誘導体は、制癌活性が癌細胞アッセイで10ナノモルオーダーと極めて強い阻害活性を有するが、その新規骨格合成を本法を巧に利用して成し遂げることに成功し、成果を速報誌SynLettに投稿し、本年3月に受理された。また国内の学会発表やベルリンでの医薬品化学の国際学会EFMC-ISMC2012で発表を行った。なお、天然物メルシカルピン全合成で、本反応を鍵反応に組み込むことを共同研究者に提案し、その合成を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験は困難かと当初思われた計画を、計画どおりに上手く進行させることに成功した。自分でも驚くべき成果を挙げたと自負している。多くの興味ある知見が得られたが、結果については未公表のものが多く、25年度にまとめたいと考えている。天然物への本転位反応が応用可能であることが証明され、また医薬品候補化合物への応用、特に極めて活性の強い前立腺制癌剤の新規合成法の開発は特記に値すると考える。このように本法がURAT-1阻害剤を含めて合成されたことと、また試薬のDIBALHが工業化学の大量合成において大手化学メーカーなどでも利用されていることから、近い将来、現在研究中のDIBALHによるオキシムの転位反応が、画期的な医薬品候補化合物群の優れた合成法として利用できることが明白になったことが大きな成果と考える。
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今後の研究の推進方策 |
23-24年度で得られた知見を用いて、本反応の特徴を最大限に生かして医薬品の短工程合成を達成し、本方法論の有用性を示す。具体的には、AVP拮抗剤(3環性ジベンゾジアゼピン骨格を基本骨格として、それを修飾した化合物でアルギニンバソプレッシン拮抗作用を有する化合物)の合成研究と、前立腺がん治療剤候補化合物である17-beta ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ;タイプ3(HSD3)の阻害剤合成研究で問題となった合成しにくいオキシム体の一般合成法の開発を新たな研究課題として追加する。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時に記述した25年度の研究方針に従って実行する。次年度使用額は、平成24年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせて、次年度に計画している研究の完結と学会発表、論文発表など総括的に使用する予定である。
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