平成23年度以来、水素化ジイソブチルアルミナム(DIBALH)を用いたオキシムおよびヒドロキシルアミンの環拡大転位反応によって、窒素原子が芳香環に隣接した芳香族二級アミン体が位置選択的に得られることとその反応機構を明らかにしてきた。DIBALH以外の還元試薬を用いた転位反応も検討し、AlHCl2もDIBALHと同程度の選択性と高収率で転位成績体を与えることを明らかにした。次いで、医薬品候補化合物の合成への応用研究を行った。痛風治療薬として期待されるヒト尿酸トランスポーター(URAT-1)阻害剤の合成に成功し、前立腺がん治療剤候補化合物である17ベータヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼタイプ3阻害剤の合成を行った。テトラヒドロジベンゾアゾシン誘導体は、制癌活性が癌細胞アッセイで10ナノモルオーダーと極めて強い阻害活性を有するが、その新規骨格合成を本法を巧に利用して成し遂げることに成功した。今年度は、三環性アルギニンバソプレシン拮抗剤の合成に成功し、上記三種の化合物の合成法を詳報として投稿した。オキシム化はカルボニル化合物にヒドロキシルアミンを反応させて得るが、キサントンなどの共役系では、うまくオキシム体が得られない。報告者らはtert-butyl nitrite とpotassium hexamethyldisilazideを用いる方法を開発して報告した。また、本研究課題に関する世界中の研究論文の紹介を、総説として執筆し、Tetrahedronに最近受理された。その内容の約70%は報告者らのグループの研究であり、報告者の研究がこの領域の中心研究であることがわかる。また国内の学会やニースでの国際医薬品化学会 RICT 2013で発表を行った。またギリシャのパトラ大学での招待講演を受けて、本研究課題の内容の一部を講演した。本研究テーマの転位反応は汎用性が高いことが判明した。
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