研究概要 |
グリコサミノグリカン(GAG)鎖の生物学的役割を解明するため、キシロースのアノマー位に疎水性部分を導入した各種GAG生合成阻害剤の開発を行った。 プロテオグリカンの生合成は、コアタンパク質のセリン残基にキシロースが結合後、グルコース2糖とグルクロン酸のコア4糖の形成がおこる。キシロースが糖鎖伸長の起爆剤であるともいわれている。コア4糖形成後、直鎖の2糖繰り返し構造GAG鎖が伸長し高分子多糖タンパク質のプロテオグリカンとなる。極めて多種類の構造が存在し、その構造の多様性がGAG鎖の多様な生物学的機能に対応している。近年我々は、コア4糖の根元のキシロースに着目しいくつかのキシロース誘導体を調製しGAG鎖生合成阻害能を確認したところ毒性がなく低濃度で特異的に活性を示す化合物を得た。これら阻害剤にはアノマー位の疎水性部分が重要であることから本研究では主に2種類の方法によりアノマー位への疎水基の導入を検討した。①クリックケミストリーによる環化反応でキシロースのアノマー位に1,2,3-トリアゾールを導入した。銅(II)を用いたクリックケミストリーによりアノマー位に1,4-二置換-1,2,3-triazole誘導体を導入した。一方、ルテニウム錯体を用いた場合1,5-二置換-1,2,3-triazole誘導体を得た。②キシロースのアノマー位にチオ尿素を導入したのちアジ化ナトリウムやギ酸ヒドラジンと反応させ1,2,3,4-テトラゾール誘導体及び1,3,4-トリアゾール誘導体を調製した。 得られたこれらの化合物の活性を評価した結果、特定のキシロースの1,2,3-トリアゾール誘導体はGAG生合成阻害能を有し、その結果、腫瘍関連血管新生を抑制した。また、1,2,3,4-テトラゾール誘導体が、GAG生合成阻害能を有しこれは新規GAG生合成阻害剤であり現在追試とさらなるデータの獲得を行っている。
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