移金属触媒による多官能性分子の位置・立体選択的反応の開発を目的として、前年度までにビナフチル型アミノ酸を配位子としたロジウムカルボキシラート触媒の創製を検討しその合成を達成した。この結果を受け、今年度はその触媒の立体構造の解明と、触媒活性について検討を行った。 X 線構造解析により、ロジウムカルボキシラート触媒の立体構造を検討した。種々の溶媒で結晶化を試みたところ、プロピオニトリルを用いると紫色のプリズム晶が得られることがわかった。解析の結果、R体のビナフチル型アミノ酸のカルボキシラートが 4 分子配位した構造が得られ、2 つのロジウムのアピカル位には、それぞれプロピオニトリルが配位していた。ビナフチル骨格およびカルバメート基はロジウムカルボキシレートの面に対して、第一象限から up-up-down-down の方向に配置した不斉環境を形成し、錯体全体としてほぼ C2 対称の構造を持っていることがわかった。この立体構造から、不斉触媒反応への応用ができると考え、その触媒活性について検討を加えた。モデル反応として、α-ジアゾアリール酢酸エステルを用いるスチレンの不斉シクロプロパン化を検討したところ、反応は速やかに進行し、不十分ながらも不斉誘導が見られることがわかった。
|