研究概要 |
本研究では、環境調和型持続型化学変換プロセスとしてのエン-インメタセシス反応の確立を目的としている。原子効率の高い化学変換であるエン-インメタセシス反応の反応性と選択性を、分子の潜在的性質に起因する分子間相互作用である水素結合相互作用を駆使して制御し、環境調和的に展開する。 これまでの研究から、エン-イン閉環メタセシス反応においてアリルヒドロキシ基の加速効果を見いだし、反応機構解析からアリルヒドロキシ基によるオレフィン活性化効果が示唆された。このアリルヒドロキシ基のオレフィン活性化効果は、関連する論文(G. S. Forman et al. Organometalics 2005, 24, 4528;A. H. Hoveydaet al. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 8378)とこれまでの実験結果から、基質アリルヒドロキシ基と第一世代Grubbs触媒の塩素原子間の水素結合形成による反応活性14電子Ru錯体の円滑供給に起因すると推定している。以上から、水素結合相互作用を活用するエン-インメタセシス反応の反応性と選択性の制御の展開性が示されており、本研究においてその開発を行った。 双環性化合物を効率的に構築するジエンイン化合物に対する分子内タンデムエン-イン閉環メタセシス反応の方向性をアリルヒドロキシ基の保護脱保護によって切り替え可能であることを明らかにしていたが、その適用範囲の解明した。水素結合形成に干渉し得るヘテロ原子(酸素原子、窒素原子)を含む反応基質に対しても水素結合制御の方向選択性制御が実現可能であることが明らかとなった。 また、想定する基質-触媒間の水素結合相互作用は、基質水酸基の保護脱保護による制御だけではなく、水素結合相互作用に干渉する添加剤によっても制御可能であると考えられ、現在、添加剤による制御を試みている。
|