研究概要 |
本研究では、環境調和型持続型化学変換プロセスとしてのエン-インメタセシス反応の確立を目的とする。原子効率の高い化学変換であるエン-インメタセシス反応の反応性と選択性を、分子の潜在的性質に起因する分子間相互作用である水素結合相互作用を駆使して制御し、環境調和的に展開する。 以前の研究から、エン-イン閉環メタセシス反応においてアリルヒドロキシ基の加速効果を見いだし(Tetrahedron Lett. 2008,48, 265)、反応機構解析からアリルヒドロキシ基によるオレフィン活性化効果が示唆された(Chem.-Eur. J. 2008, 14, 10762)。このアリルヒドロキシ基のオレフィン活性化効果は、関連する論文(G. S. Forman et al. Organometalics 2005, 24, 4528;A. H. Hoveyda et al. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 8378)とこれまでの実験結果から、基質アリルヒドロキシ基と第一世代Grubbs触媒の塩素原子間の水素結合形成による反応活性14電子Ru錯体の円滑供給に起因すると推定している。以上から、水素結合相互作用を活用するエン-インメタセシス反応の反応性と選択性の制御の展開性が示され、本研究においてその開発を行う。 これまでに、双環性化合物を効率的に構築するジエンイン化合物に対する分子内タンデムエン-イン閉環メタセシス反応の方向性をアリルヒドロキシ基の保護脱保護によって切り替え可能であることを明らかにした。 また、想定する基質-触媒間の水素結合相互作用は、水素結合相互作用に干渉するアルコール添加剤によっても影響を受けることが明らかとなった。しかしながら、現段階では添加剤による明確な方向性制御を実現できていない。今後更に制御を試みる予定である。
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