研究課題/領域番号 |
23590015
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
澤田 大介 帝京大学, 薬学部, 准教授 (00338691)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流(フランス、台湾) / タキステロール / ビタミンD / 有機合成化学 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
本年度は14-epi-19-Norprevitamin D3から14-epi-19-Nortachysterolへの異性化機構の解明に着手した。Hos細胞培養液、血清、バッファーの関与、また、共結晶作成中のVDR、バッファー、無機塩の影響についてそれぞれ精査したところ、この異性化には酸性プロトンの存在が必要であることが分かった。続いて、14-epi-19-Nortachysterol誘導体の化学合成を行った。ここでは先に合成した14-epi-19-Norprevitamin D3の合成法を活用した。すなわち、A環部には(-)-キナ酸から導いたtrans配置をもつビニルスズ化合物と、エノールトリフラートとしたCD環部とのStilleカップリング反応によって合成を達成した。ここで、14位の立体について、天然のビタミンD3と同じ立体配置を持った19-Nortachysterolの合成を同様の合成ルートにより、14位の立体配置の逆転したCD環部を用いて行い、両化合物の安定性を比較した。その結果、19-Nortachysterolは非常に不安定であり、骨格の安定性には14位の立体化学が関与することを明らかにした。また、上記の合成法を元に、2位にメチレン、α-メチル、β-メチル基を導入した誘導体の合成を合わせて達成した。以上、合成した化合物のヒトVDR結合親和性を測定した。その結果、天然の活性型ビタミンD3と同様に2位の置換基による親和性への寄与が確認され、2-メチレン置換体において最も高い親和性を有することが分かった。続いて、VDRとの結合様式の解明を行うべく、X線共結晶解析を試みた。2位α-メチル、β-メチル置換体について検討したところ、5-8位の立体化学について、天然の活性型ビタミンD3と異なり、前例の無い5,6-及び、7,8-s-trans配置を取ることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
始めに14-epi-19-Norprevitamin D3から14-epi-19-Nortachysterolへの異性化機構の解明について、酸性プロトンの必要性を明らかにし、次に、14-epi-19-Nortachysterol誘導体の化学合成を当初計画した合成ルートで達成することが出来た。これらについては、極めて順調に研究計画が進行した。また、合成した新規化合物のヒトVDR結合親和性を測定し、またVDRとのX線共結晶解析を行い、結合様式の解明を行った。その結果、高い結合親和性と、前例の無い結合様式を取ることが明らかとなり、研究計画以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
合成した新規化合物のヒトVDRとのX線共結晶解析を行い、非常に興味深い結合様式が明らかとなったことから、当初の研究計画に若干の修正を加えることとする。すなわち、今後の誘導体デザインについて側鎖構造、及び1,3位水酸基の修飾よりも、トリエン部が分子構造に与える影響について優先的に研究を進める。具体的には、8,9位を飽和させたtachysterol誘導体の化学合成を行い、それを足がかりとして新規骨格をデザイン、合成し、広くtachysterol類の構造化学についての知見を得ることを目的とし研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に行った研究成果である、14-epi-19-Nortachysterol誘導体の化学合成とそのヒトVDRとの結合様式の解明が、国内外で高く評価され、次年度に国際学会において複数回発表を行う予定である。そのため、海外旅費を次年度に繰り越し計上した。また、本学(帝京大学薬学部)は本年度末にキャンパスの移転を行ったため、年度末前の期間、消耗品、試薬等の注文を控え、移転後の新年度、新キャンパスにおいての消耗品、試薬等の購入に備えたため、その予算を繰り越し計上した。以上の理由により、385559円を次年度に繰り越し、平成24年度交付金と合わせて、6月(Vitamin D Workshop、アメリカ、Houston)、9月(EFMC-ISMC2012、ドイツ、Berlin)の国際会議出席、発表を行い、また消耗品購入に使用する予定である。
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