研究課題/領域番号 |
23590015
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
澤田 大介 帝京大学, 薬学部, 准教授 (00338691)
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キーワード | 国際情報交換(フランス、台湾) / タキステロール / ビタミンD / 有機合成化学 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
本年度は14-epi-19-nortachysterolの2位ヒドロキシプロピル、及びヒドロキシプロポキシ置換誘導体の化学合成を行った。ここでは昨年度合成した14-epi-19-nortachysterolの合成法を活用し、A環部には(-)-キナ酸、またはシキミ酸を原料とし、2位にあらかじめヒドロキシプロピル基、ヒドロキシプロポキシ基を導入したビニルスズ化合物と、エノールトリフラートとしたCD環部とのStilleカップリング反応によって合成を達成した。また、上記の合成法を元に、19位のメチル基を復元した、より天然に近い誘導体、すなわち14-epi-tachysterolの化学合成を行った。ここでは、中間体の不飽和エステルをジアゾメタンと環化付加反応させた後、DMF中で加熱することにより熱分解を行い、19位に相当するメチル基を導入し、その後の変換により19位メチル基を持つA環フラグメントを合成した。これを上記と同様にCD環部とのStilleカップリング反応により合成した。 以上、合成した化合物のヒトVDR結合親和性を測定した。その結果、2位ヒドロキシプロピル、及びヒドロキシプロポキシ置換14-epi-19-nortachysterolで低い親和性を示し、この骨格においては2位置換基の効果はメチル、及びメチレン基とは異なることが分かった。14-epi-tachysterolについても低い親和性を示し、この骨格においては19位のメチル基は親和性に寄与しないことが分かった。 続いて、VDRとの結合様式の解明を行うべく、X線共結晶解析を試みた。14-epi-tachysterol についても14-epi-19-nortachysterol と同様に5,6-及び、7,8-s-trans配置を取ることが分かり、19位のメチル基の有無に関わらず、トリエンの安定性を優先すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
14-epi-19-Nortachysterolの更なる誘導化を行った。また、14-epi-tachysterolの化学合成を達成し、19位メチル基の導入法を確立することができ、順調に研究計画が進行した。また、合成した新規化合物のヒトVDR結合親和性を測定し、またVDRとのX線共結晶解析を行い、結合様式の解明を行った。その結果、2位置換基の効果についてvitamin D骨格とは異なる効果を明らかにした。また、19位のメチル基の結合様式に対する効果を明らかにし、概ね研究計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度合成した新規化合物のヒトVDRとのX線共結晶解析を行い、非常に興味深い結合様式が明らかとなり、それについての今年度の結果を踏まえ、当初の研究計画に若干の修正を加えることとする。すなわち、今後の誘導体デザインについて側鎖構造、及び1,3位水酸基の修飾よりも、トリエン部が分子構造に与える影響について優先的に研究を進める。具体的には、8,9位を飽和させたtachysterol誘導体の化学合成を行い、それを足がかりとして新規骨格をデザイン、合成し、広くtachysterol類の構造化学についての知見を得ることを目的とし研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に行った研究成果を6月の国際学会(14th Tetrahedron symposium、オーストリア、ウィーン)、11月の二件の国内の学会(反応と合成の進歩シンポジウム、福岡、メディシナルケミストリーシンポジウム、広島)で発表を行う予定である。そのため、旅費を次年度に繰り越し計上した。平成25年度交付金と繰り越した163933円を合わせて、上記学会参加費用と研究用消耗品購入、実験用試薬購入に使用する予定である。
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