研究概要 |
本年度は誘導体デザインについて側鎖構造、及び1,3位水酸基の修飾よりも、トリエン部が分子構造に与える影響について優先的に研究を進めた。具体的には、8,9位を飽和させたtachysterol誘導体の化学合成を行い、それを足がかりとして新規骨格をデザイン、合成し、広くtachysterol類の構造化学についての知見を得ることとした。 合成計画として、先に合成した14-epi-19-Norprevitamin D3の合成法を活用し、A環部とCD環部のStille カップリング反応によって合成することとし、まず始めに14位をエピ化した化合物、8,9-dihydro-14-epi-19-Nortachysterolを母核とする誘導体を合成した。特に今回は、あらかじめ8,9位を飽和結合としたCD環部を合成するため、以下のように合成を行った。25-hydroxy-Grundmannsケトンの25位水酸基をTESで保護し、14位をエピ化した化合物に対し、Wittig反応を行いexoメチレンを構築し、9-BBNを用いたヒドロホウ素化反応と続く酸化反応により1級水酸基を導入した。これに対し、光延反応によってメルカプトベンゾチアゾール基を導入し、続く酸化反応によりJuliaカップリング前駆体となるスルホン体へと導いた。A環部は(-)-キナ酸から導いたアリルアルコールを酸化して得られたアルデヒド体を用いた。以上のフラグメントを、LHMDSを用いたJuliaカップリング反応にふしたところ、カップリング成績体が認められ、続くTBAFによる脱保護を行い、二工程の収率79%にてカップリング体が得られた。これを精査したところ、6,7位の二重結合部においてcis/trans 23:77の比率で異性体が得られた。 以上、合成した化合物のヒトVDR結合親和性を測定した。その結果、天然の活性型ビタミンD3と比較して両化合物ともに1%未満という低いものとなった。また、数字には表れないが、cis体とtrans体ではやや後者が高い親和性を示した。現在、VDRとの結合様式の解明を行うべく、X線共結晶解析を検討中である。
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