研究概要 |
初年度は,一部の環や酸素官能基の欠如したモデル化合物を含めた,C環が未環化の状態の(A)B-D環部位に対応する単量体 2-シクロヘキセニルナフタレン誘導体の合成を検討した.すなわち,(A)B環に対応する 1,4,5,8 位に酸素官能基を持つナフタレンボロン酸とD環部位に相当するブロモエノンをそれぞれ合成し,鈴木カップリングで連結するルート,(A)B環部位を有する桂皮酸誘導体とシロキシジエンとの Diels-Alder 反応を経由するルートをそれぞれ検討した.市販の 1,5-ジヒドロキシナフタレンから酸化的臭素化,超原子価ヨウ素による酸化などを経て,ロマイビチシンAB環部位の相当する 1,4,5,8-位に酸素官能基を有するブロモナフタレンを合成した.その際,酸素官能基の保護基として,キナマイシン類の合成研究においてメチル基を用いた場合に脱保護に問題があったため,5,8-位については MOM 基を導入したものを合成した.一方,D環部位に相応するモデル化合物として,D環上の酸素官能基の欠如した化合物の合成を行った.市販のシクロヘキサンシアンヒドリン由来の a,b-不飽和ニトリルのアリル位酸化が低収率であったこと,また実際の中間体よりアクセスが難しいなどの理由から,シクロヘキセノンを用いるルートを開拓した.永田試薬 (Et2AlCN) との反応に続くシリル化,IBX 酸化を経て対応する b-シアノエノンを得た.このものをB-D環部位に対応する化合物へと変換中である.また,酸素官能基を有する光学活性なD環部位の合成については,3-エチルフェノールより5工程でシクロヘキセノン誘導体へと変換した.また,桂皮酸誘導体の DA 反応については,熱的条件で対応する DA 付加体が得られることを確認した.
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