研究課題/領域番号 |
23590018
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
熊本 卓哉 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (50292678)
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キーワード | ロマイビチシン / 抗生物質 / 抗腫瘍活性 / Diels-Alder 反応 / 鈴木-宮浦カップリング / 2量化反応 |
研究概要 |
昨年度に引き続き,D環部位に相応するモデル化合物として,酸素官能基の欠如した化合物の合成を行った.前年度までにシクロヘキセノンの永田試薬 (Et2AlCN) によるシアノシリル化,続く酸化により 3-シアノシクロヘキセノンを合成したが,収率が最高で 57% で,再現性も得られなかったことから,ルートを変更した.シクロヘキセノンの2位をブロモ化後,フェニルボロン酸との鈴木カップリングに付し,対応する 2-フェニルシクロヘキセノンを得た.このものに永田試薬を作用させたのち,TMSCl で処理し,3位にシアノ基を導入したシリルエノールエーテルを得た.このものの IBX 酸化によるエノン合成は低収率であったため,触媒として酢酸パラジウム,共酸化剤として酸素を用いる酸化を検討したところ,高収率で対応するエノンを得ることができた.また,前年度に引き続き,桂皮酸誘導体の DA 反応を検討した.前年度,熱的条件で対応する DA 付加体が得られることを確認したが,低収率であった.そこで,用いる桂皮酸誘導体を (E) 体から (Z) 体へと変更し検討したところ,比較的良好な収率で対応する DA 付加体をジアステレオマー混合物として得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
いくつかの点で多少の遅れが見られる.平成24年度に行ったナフタレン誘導体の合成は,人員の不足から研究が遂行できなかった.また,2量化反応の基質を合成するところまでは達成したが,その2量化の検討はこれからとなっている.DA 反応を利用した単量体の合成も端緒が見えた時点であり,より一層研究を進めていく必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,2量化反応のモデル反応の達成と,基質合成を完結することを目標とする. 鈴木-宮浦カップリングを経由するルートとして,ロマイビチシンAB環部位の相当する酸素官能基を有するブロモナフタレンの大量合成を達成する.また,昨年度合成を達成したD環部位の酸素官能基の欠如した化合物の2量化反応を検討する.また,酸素官能基を有する光学活性なD環部位に対応する光学活性シクロヘキセノン誘導体からも同様に(A)B-D環部位誘導体へと変換する予定である. また,桂皮酸誘導体の DA 反応を経由するルートについては,ジエノフィルとして(Z) 体の桂皮酸誘導体の利用を引き続き検討し,さらにアセチレン誘導体を用いた検討も行う. DA 反応の不斉配位子としての 酸性プロトンを有するキラルグアニジンの設計と合成,およびこのキラルグアニジンや既知の不斉配位子存在下での不斉反応の検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,合成のための試薬,溶媒,ガラス器具などの消耗品に全体の5割程度を充てる.その他,学会発表のための旅費(国際学会,日本薬学会年会),文献調査費用(本学図書が限られた文献しか所蔵していないため),合成サンプルの分析料(元素分析など)として使用する予定である.
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