研究課題/領域番号 |
23590019
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
齋藤 直樹 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (80142545)
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研究分担者 |
横屋 正志 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (50338539)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イソキノリン / 海洋天然物 / 抗腫瘍活性 / 全合成 / 構造活性相関 / 国際情報交流 / タイ王国 / フィリピン |
研究概要 |
1.エクチナサイジンを創薬シードとする医薬品開発研究:タイに生息する群体ホヤの二次代謝物として得られるエクチナサイジン(Et)743の安定誘導体として得たEt 770に存在する2つのフェノール性水酸基を保護、第2級アミンをアシル化、脱保護して様々な2’-N-アシル誘導体を合成し、ヒト実験腫瘍細胞に対する増殖抑制活性を指標として検定した。その結果、これまでで最強の活性を示す化合物を見出すことに成功した。2.レニエラマイシンを創薬シードとする医薬品開発研究:(1)レニエラマイシン系海洋天然物のうち、21位にラクタムカルボニル基を持つレニエラマイシンGとクリブロスタチン4の全合成に成功した。さらに、前者においては、合成工程の短縮による収率改善に成功した。いずれの合成も基本骨格を構築後、1位側鎖の立体を反転させる独自の経路であり、大量合成に適した特徴を持つ。(2)タイの青色海綿について、二次代謝物の探索研究を展開したところ、新規極微量天然物としてレニエラマイシンV (RV) の単離に成功し、各種機器スペクトルの詳細な解析によりその構造を提出した。本品はレニエラマイシンMの14位にコレステロールの3位水酸基がエーテル結合した斬新な構造を有している。なお、本品は抗腫瘍活性を全く示さない点は興味深い。(3)RVの合成を目的として、右半部モデル化合物14位への立体選択的アルコールの導入による一般的エーテル結合形成反応の開発に成功した。3.本系天然物の活性発現に必要な構造単位の解明:本系天然物の活性発現に必須な構造単位を含む左半部モデル化合物およびそのアナログを合成し、ヒト実験腫瘍細胞に対する細胞毒性試験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.エクチナサイジンを創薬シードとする医薬品開発研究において、(1)Et770に含まれる官能基のうち、2’-NHの化学修飾が活性増強に必須であること、(2)18-OHを修飾すると活性が劇的に低下することを明らかにすることができたことは、ひとつの壁を乗り越え、本研究が新たなステップに到達できたと考える。2.21位にラクタムカルボニル基を持つレニエラマイシン系海洋天然物の全合成に成功したことは、(1)本系天然物の恒久的な供給手段を構築した、(2)キラル合成への展開を可能とする、(3)天然から得られない本系天然物のアナログの合成による広範な構造活性相関研究の実施、に貢献できたと考える。3.左半部および右半部モデル化合物の合成と新規反応の開発は合成化学の発展に多大な貢献をもたらした。
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今後の研究の推進方策 |
1.エクチナサイジン770の活性増強を目指した誘導化は修飾すべき位置がほぼ確定しているので、継続して研究を展開する。ただし、次のステップでは正常細胞に影響を与えずがん細胞に選択毒性を示す化合物の探索が求められるので、その点も意識しながら適切に研究が向かうべき方向を見極めていきたい。2.前年度に達成したレニエラマイシンGの全合成経路を基軸として、本系天然物の一般的合成経路を開発する。本年度はレニエラマイシンMの全合成をめざす。3.最近、フィリピン沿岸においてレニエラマイシン系海洋天然物を生産する青色海綿の採集に成功した。そこで、その成分検索を実施する。ここで得られる化合物群とタイのそれを比較し、起源海洋生物の生息地と成分の比較を行う。また、新規天然物が発見できた場合は、その純合成あるいは既存天然物からの化学変換を実施する。4.タイ国に生息する群体ホヤが生産するマイナー成分の探索を行い、新たな創薬ターゲットの創製をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 物品費(合成原料、試薬、ガラス器具) 650,000 円2. 物品費(機器スペクトル測定費・溶媒) 100,000 円3. 旅費(国内学会) 80,000 円4. 人件費・謝金(学術論文英文校閲) 40,000 円5. その他(論文別刷、その他) 30,000 円
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