研究課題/領域番号 |
23590021
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
高取 和彦 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (30231393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 環開裂反応 / 環化反応 / マイクロ波 |
研究概要 |
本年度は、主にザラゴジン酸類の合成とホマクチン類の合成について検討した。ザラゴジン酸類の合成では必要な立体化学を有するコア部の合成に成功した。まず、フランジメタノールジベンジルエーテルとアセチレンジカルボン酸ジメチルのマイクロ波加熱Diels-Alder反応によって得た対称オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン誘導体から5工程で非対称化をおこない、ラクトンを合成した。これをアルコールまで還元後、選択的に保護してフラグメンテーション反応前駆体であるメシラートへ導いた。KHMDSを用いたフラグメンテーション反応は首尾よく進行したものの、オキセタンを副生した。そこで、ラクトンを部分還元して得たヘミアセタールを利用し、架橋を形成させたメシラートを合成してフラグメンテーション反応に付した結果、オキセタンを副生することなく目的とする環開裂体を得ることができた。続くケトンの還元とmCPBA酸化によって、コア部構築を行なった。このルートでは3位の立体配置が天然物とは異なる生成物を与えるが、この反転にも成功し、必要な立体化学を有するコア部を合成することに成功した。ホマクチン類の合成では、フラグメンテーション反応の基質となる10員環の環化前駆体を合成した。まず、D-グリセルアルデヒドから得たα,β―飽和エステルと(-)-カルボン誘導体から光学活性ビシクロ[2.2.2]オクタン誘導体を合成した。イゾプロペニル基の異性化はアセトニドの除去、エポキシ化、LDAによるエポキシドの開環で達成された。本年度は10員環構築に閉環メタセシスを試みた。10員環構築に必要な側鎖はビニルリチウム誘導体のアルデヒドへの付加でおこない、得られた環化前駆体に対して各種Grubbs触媒を用い、マイクロ波加熱も利用してRCMを試みた。しかし、目的とする10員環誘導体は得られず、分子間で反応した二量体を与えるのみであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ザラゴジン酸合成においては、最も合成が難しいコア部構築に成功したので、達成度は40%程度であると考えられる。残る段階は、コア部酸化段階の調整、光学活性コア部の合成、1位アルキル側鎖の調製と導入、アシル側鎖の調製と導入、アナログ合成の段階が残っている。このうち、光学活性なコア部合成中間体の調製法は酵素加水分解を用いた非対称化によって開発できている。また、光学活性な1位アルキル側鎖の合成法もEvansアルドール反応を用いる方法である程度の目処は立っている。ホマクチン類の合成に関しては、10員環構築に必要な炭素鎖を揃えられた段階で、達成度は30%程度と考えられる。6員環部の官能基は立体選択的な導入がほぼできており、残る段階は10員環構築とフラグメンテーション反応によるホマクチン骨格の形成、天然ホマクチン類への官能基変換である。10員環が構築できてしまえば、フラグメンテーション反応は容易であると考えている。タキソール合成に関しては、現在のところモデル実験に留まっており、達成度は20%程度と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ザラゴジン酸合成に関しては、まず、コア部酸化順序を確定する。1位側鎖導入の足がかりとなる官能基は用意できているので、その導入法について、モデル実験で検討する。次いで、光学活性コア部の合成、1位アルキル側鎖の調製と導入、アシル側鎖の調製と導入を経て、ザラゴジン酸全合成を達成したい。また、アナログ合成も順次行なう。ホマクチン合成では、まず10員環を構築する必要があり、McMurryカップリング、ピナコールカップリング、あるいはNHK反応による閉環を検討する。また、別法として、ラジカル環化による6員環形成と続くマイクロ波加熱Cope転位による環拡大も検討する。10環構築後はフラグメンテーション反応によるホマクチン骨格の形成、天然ホマクチン類への官能基変換を行い、ホマクチンDあるいはHの合成を目指す。タキサン合成ではモデル化合物を用いたマイクロ波加熱Cope-Claisen転位によるAB環部の合成を検討する。続いてモデル合成に従って、官能基を導入した原料からのAB部構築、更にC環形成を行なう。各合成とも、加熱反応の場合はマイクロ波加熱法を効果的に利用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、合成原料となる各種有機化合物、反応試薬、化合物の精製に用いるシリカゲルや実験に用いるガラス器具類などの消耗品の購入に用いる。
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