研究概要 |
マイクロ波照射を有効利用する環形成と環開裂を用いて生理活性天然物効率的合成を検討した。ザラゴジン酸類合成では、フルクトースの熱分解をマイクロ波照射下で行なったところ、通常の加熱条件では数時間かかっていた反応が僅かに5分以内で終了し、基本構造となるフラン環を効率良く構築することができた。水酸基をジベンジル化後、アセチレンジカルボン酸ジメチルとのマイクロ波照射Diels-Alder反応によって得た対称オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン誘導体をエポキシドとし、その開環を伴うラクトン形成でこれを非対称化した。ラクトン部の部分還元で得た多環状化合物のGrob環開裂、還元、アセタール形成をワンポットで行いコア部骨格を構築した。3位の立体反転の後、段階的な酸化でコア部の完全ラセミ合成に成功した。現在、光学活性コア部の合成と1'位アルキル側鎖の導入を検討している。また、ラクトン中間体に2つの側鎖を加えたアナログを合成したが、残念ながらこのものにスクワレン合成酵素阻害活性は見出せなかった。ホマクチン類合成では、α,β-不飽和エステルとカルボン誘導体との連続Michael反応によって光学活性ビシクロ[2.2.2]オクタン誘導体を合成した。しかし、11位に相当する不斉炭素の立体配置が天然物とは逆になってしまった。環開裂に必要な第三級水酸基を導入するとともにイソプロペニル基を立体反転させ、鍵中間体を合成した。10員環構築は、閉環メタセシスをはじめ種々の方法で検討したが困難であった。そこで、環開裂後に12員環形成することとし、鍵中間体からのレトロアルドール反応による環開裂を検討した。反応は首尾よく進行し、生じたケトンを利用して懸案事項であった11位のエピメリ化を達成することができ、6員環部4連続不斉中心の構築に成功した。現在、12員環部の炭素鎖を備えた形での環開裂と12員環の構築を検討している。
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