研究概要 |
特徴的な反応性を示すSmI2は有機合成化学上重要な反応剤であるが、その調製に高価なSmが必要とされるという難点をもつ。本研究はその弱点克服と、SmI2の誘起する新規かつ有用な反応の開発及びその利用による生理活性天然物の新合成ルートの開発を研究目的とした。 平成23、24年度の主たる成果は、次の3点である。1)カルボニル基のγ位にシリルオキシ基を有するビスα,β-不飽和エステルを基質とする連続環化において、SmI2の触媒化を実現した。すなわち、ミッシュメタル共存下、触媒量のSmI2を作用させると、ほぼ同様に反応が進行する。2)SmI2の誘起する新しい転位反応を見出した。これは4員環部に末端メチレンをもつビシクロ[4.2.0]オクタノン誘導体を5員環部に末端メチレンを有するビシクロ[3.2.1]オクタン誘導体に一挙変換する方法である。3)第三級アリルアルコールのエノンへの酸化的アリル転位の新手法を見出した。平成25年度は、これら3つの反応の詳細な検討を重点的に行った。1)に関しては、Sm不在の条件でも同様の反応が進行させる方法を見出した。すなわち、安価なミッシュメタルと1,2-ジヨードエタンを反応させた後、メタノール存在下、ビスα,β-不飽和エステルを反応させる方法である。2)に関しては、各種基質を用いて検討し、反応条件としてSmI2-HMPAあるいはSmI2-LiClが極めて有効であることを見出すとともに、反応機構解明の手掛かりとなるケトンと末端メチレンが結合した3員環化合物の単離に成功した。3)の触媒量のピリジニウムジクロマートと再酸化剤を組合せに関しては、5員環及び6員環をもつ第三級アリルアルコールの酸化的アリル転位反応に、本試薬が極めて有効であること、また、TEMPO-NaIO4-SiO2では良好な結果を与えないアリルアルコールにも有効であることが明らかにした。
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