研究概要 |
1.三重結合を有する求核基質(NuH)にイソセレノシアナートを反応させることにより,生成するセレノール類の分子内三重結合へのタンデム付加・環化を基盤とする各種複素環合成のうち,すでに検討済みであったアミン類(Nu= NH)に引き続き,フェノール類(Nu= O)につき検討した。その結果,新規な骨格であるセレナクロマン類の合成に成功すると共に反応溶媒による環化様式の違いを見出した(23年度計画-1,Heterocycles, 投稿中)。2.上記反応戦略において,求核基質をカルバニオンにすることにより,ベンゾ[c]セレノフェン類の簡便な合成に成功した(23年度計画-2,Tetrahedron Lett., 2011, 52, 3279-3282.)。3.上記反応戦略の求核基質内の三重結合をハライドに替えることにより,ベンゾセレナゾール類の一般合成法を確立した(23年度計画-3,Tetrahedron Lett., 2011, 52, 505-508.)。さらにハライドの種類の違いにより環化様式に違いがあることを明らかにした。4.極最近,発見された抗生物質であるピリドベンゾチアジン(PD404182)のセレンアナログを上記反応戦略の利用により一部成功し,類縁体の合成を展開中である(23年度計画-4)。特許出願予定。5.本合成戦略を硫黄アナログに展開することにより,ベンゾチアゾール類の簡便な一工程一般合成法を確立した(23年度計画-5,Heterocycles, 2012, 84, 669-682.)。6.分子内に三重結合を有するイソチアシアナート(硫黄アナログ)と求核剤アミン類との銀触媒タンデム付加・環化反応により,複素環合成を行い,用いるアミン類の級数により,環化様式に違いがあることを明らかにした(Tetrahedron Lett., 2012, 53, 748-751)。
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