研究課題/領域番号 |
23590025
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
井上 誠 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (50191888)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レチノイン酸受容体 / 核内受容体 / 食物アレルギー / ドッカツ / 天然物 / pimaradienoic acid |
研究概要 |
150種類の生薬抽出エキスを用いて、新規retinoic acid receptor (RAR)アゴニストを探索した。その結果、ドッカツ、ソウハクヒ、ジコッピなどに比較的強い活性を見出した。活性成分の単離を行ったところ、ジッコピより2つの化合物(特許申請を考慮中)にRARアゴニスト活性を見出した。次に、これまでにRARアゴニストとしてドッカツより単離したpimaradienoic acid(PDA)のアゴニスト特性を検討した。PDAはRARを活性化したが、retinoid X receptor, liver X receptor, peroxisome proliferator-activated receptor γ と δは活性化せず、PDAはRARに選択的なアゴニストであった。構造活性相関を調べたところ、pimaric acidと abietic acidが同様の活性を示すことを見出した。しかし、abietic acidのカルボン酸にアミノ酸(アラニン等)をアミド結合させることにより活性が消失した。PDAが細胞に及ぼす効果を調べたところ、PDAはF6細胞のRAR標的遺伝子(Cyp26a1他)の転写を活性化し、レチノイン酸と同様にHL-60細胞の顆粒球への分化を促進し、細胞レベルでRARアゴニストとして作用していることがわかった。そこで、卵白アルブミンを用いた食物アレルギー疾患動物モデルを作製し、ドッカツ抽出エキスを経口投与して食物アレルギーに及ぼす効果を調べた。その結果、ドッカツ抽出エキスは20、100、500 mg/kgの用量で用量依存的に食物アレルギーによる下痢を抑制し、500 mg/kgでは全く下痢は観察されなかった。以上のこれまでに得られた結果より、RARアゴニストを含有する生薬が食物アレルギーに対して有効である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規RARアゴニストの探索、アゴニストの特性解析、食物アレルギー疾患動物モデルの作製と評価方法の確立を平成23年度に計画した。新規RARアゴニスト探索は2つの生薬より活性成分の単離同定に成功している。しかし、活性の示すいくつかの残りの生薬からの新規RARアゴニストの単離が現在も進行中である。これまでに単離同定したPDAのアゴニスト特性の解析は、かなり進んだが、各種細胞に対するRARアゴニスト活性及びレチノイン酸との遺伝子活性化プロファイルの比較検討は今後の重要課題である。さらに、制御性T細胞の誘導に及ぼす新規RARアゴニストの効果をみる実験は、現在、方法論の確立に条件検討を繰り返しているところである。一方、卵白アルブミンを用いた食物アレルギー疾患マウスモデルは完成し、評価項目の解析方法お確立でき、生薬エキスでの検討は始めおり計画より早く進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
新規RARアゴニストがいくつか既に見つかっており、今後も探索研究を進めることによりさらに新たな新規RARアゴニストを見出すことができると考えている。そこで今後の研究計画は、当初の計画に従い、RARアゴニストの探索を進め、単離同定できた複数のRARアゴニストを用いて、RARアゴニストの特性解析を行う。特に、核内受容体特異性、細胞特異性、遺伝子活性化プロファイルに関して、レチノイン酸と比較検討していく。さらに、制御性T細胞の誘導に及ぼす効果を詳細に調べるとともに、in vivoの食物アレルギーや関節リウマチ疾患動物に及ぼす作用を検討する。そして、天然由来RARアゴニストがレチノイン酸とは異なり副作用を示さない安全性の高い免疫疾患予防改善薬になる可能性を追求していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の繰越金を含め総額1775344円を以下の様に使用する予定である。物品費1635344円、旅費50000円、人件費・謝金40000円、その他(論文投稿料など)50000円とした。物品費は、RARアゴニストの単離構造決定のために有機溶媒やHPLCカラム、細胞培養用の培地・試薬・器具、食物アレルギー疾患動物モデル作製用のC57BLマウス、アッセイ系に使用する分子生物学実験用試薬及び一般・免疫実験用試薬に使用する。研究成果発表ための交通費・宿泊費用として旅費を50000円、外国語論文の校閲費用として謝金を40000円、研究成果投稿料として50000円を計上した。
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