研究課題/領域番号 |
23590025
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
井上 誠 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (50191888)
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キーワード | RARアゴニスト / レチノイン酸受容体 / 食物アレルギー / 制御性T細胞 / 漢方繁用生薬 / 天然物化学 |
研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き、天然由来retinoic acid receptor (RAR) アゴニストをさらに探索するために、本研究室で使用している生薬メタノール抽出液ライブラリー以外の創薬資源として、富山大学から提供していただいた120種類の生薬熱水抽出エキスをHEK293細胞を用いたルシフェラーゼレポーターアッセイ法でスクリーニングした。殆どの生薬熱水抽出液は活性を示さなかったが、マンケイシのみがコントロールの3倍以上の活性を示し、その活性はRARアンタゴニストで阻害された。また、マンケイシの比較を行ったところ、マンケイシの販売元数社のうちU社から販売されているマンケイシにのみRARアゴニスト活性が見出され、現在活性成分の単離同定を進めている。 これまでにドッカツからRARアゴニストとして単離同定したpimaradienoic acid (PDA) に関してそのRARアゴニストの特性を解析してきた。そこで、大量のPDAを分取するのは困難であったため、PDAを高濃度(約80%)含有する抽出画分を用いて、食物アレルギーモデルマウスを作製しPDA抽出画分の効果を検討した。食物アレルギーマウスモデルは、オブアルブミン(OVA)及び水酸化アルミニウムゲルを0日目、10日目に腹腔内投与した後、次にOVAを21日目より3日ごとに6回胃内強制投与して作製した。PDA抽出画分はOVAを胃内強制投与(PDA量として15 mg/kg of BW)する3日前の18日目よりを胃内に強制投与した。その結果、コントロール群では3回目のOVA投与より下痢が観察されるようになり、5回目の投与後には殆どのマウスが下痢を発症し、食物アレルギーが惹起されたことが確認できた。しかし、PDA抽出画分の投与により著しい改善効果は観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的である、「天然由来RARアゴニストの免疫・アレルギー疾患の予防・治療への応用」を目指すために、レチノイン酸とは特性の異なるRARアゴニストを多く単離同定必要がある。しかし、RARのリガンド結合領域がperoxisome proliferator-activated receptor (PPAR)とは異なり体積的に小さいため、予想と異なり天然由来RARアゴニストを見出すことがかなり難しく、時間がかかっている これまでのところRARアゴニストの探索を精力的に行っているが、PDAとその関連化合物であるピマール酸及びアビエチン酸にしか活性を見出していない。しかし、それらの活性はかなり弱いものであり、現時点ではin vivoでの活性は観察されていない。 一方、アッセイ系に関しては、OVAを用いた食物アレルギーマウスモデルの作製と評価方法は確立できた。さらに、In vitroでの制御性T細胞の誘導及びその評価方法は現在も検討中であり、レチノイン酸より弱いあるいは特性の異なるRARアゴニストによる効率の良い制御性T細胞の誘導及び評価方法を確立に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、レチノイン酸とは異なり長期使用しても重篤な副作用を示すことなく、天然由来RARアゴニストが免疫・アレルギー疾患を制御することができることを立証することであう。そのためには、レチノイン酸とはアゴニスト特性の異なるRARアゴニストを多く単離同定必要がある。現在は、マンケイシに強い活性を見出しており、活性成分の単離同定に取り組んでいる。さらに、創薬資源としてトルコ産植物からRARアゴニストを見出す努力を続けている。このように、本年度も探索研究は継続していく。 また、単離されたRARアゴニストに関しては、これまでに確立した方法を用いて、in vitroでのRARアゴニスト特性・制御性T細胞の誘導能の検討、in vivoでの食物アレルギーモデル動物に対する有効性の評価を行っていく予定である。関節リウマチモデル動物に対する有効性の評価は時間的に実施できない可能性が高い。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の繰越金を含め総額1266025円を以下の様に使用する予定である。物品費1176025円、人件費・謝金40000円、その他(論文投稿料)50000円とした。物品費は、1)食物アレルギー疾患動物モデル作製用のC57BLマウス、2)in vitro制御性T細胞誘導実験に使用する抗体や試薬、器具、3)RARアゴニストの単離、構造決定のための有機溶媒やカラム担体、などに使用する。
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