1)平成23年度、24年度を通して270種類の生薬抽出エキスを用いて、retinoic acid receptor (RAR)アゴニストの探索を行ってきた。しかし、all-transレチノイン酸に匹敵するような強いRARアゴニストは見いだせていない。そこで本年度は新たに薬用の有無に関わらず多様な植物エキスの調製を行い、24種のエキスについてRARアゴニスト活性の探索を行った。その結果、多くのエキスの細胞毒性が観察された。RARは生体内において細胞増殖抑制やアポトーシスに関わることから、毒性の見られた植物エキスにRARアゴニスト活性を有する可能性の考え、細胞生存率80%を超える濃度を設定し、ルシフェラーゼレポーターアッセイ系で検討した。その結果、ハリグワの根皮とカヴァの地下部にRARアゴニスト活性を見出した。現在、活性化合物の単離同定を進めている。 2)昨年度RARアゴニスト活性を見出したマンケイシから活性成分の単離を試みたが、シリカゲルクロマトグラフィー、Sep-pak C18カートリッジ、Sephadex LH-20カラムにより活性成分の濃縮が効率良く行えず、逆に活性が消失してしまうことより活性成分の単離には至らなかった。 3)本研究で見出した化合物、抽出エキスに食物アレルギーの改善作用が観察されなかったので、RARアゴニストの新たな利用方法として、抗肥満、抗糖尿病作用を考え、脂肪細胞の分化抑制活性を検討した。その結果、クコシなどに含有されるRARアゴニストであるβ-クリプトキサンチンがall-trans レチノイン酸とは異なる機序で3T3-L1前駆脂肪細胞の分化を抑制する作用を示すことを見出した。その作用の一部は、分化に重要な役割をしているc/EBPβの転写を抑制している可能性が示唆された。
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