研究概要 |
申請者らは、アキラルなビナフチル型CDプローブを水酸基やアミノ基を有するキラル化合物に共有結合により連結させたところ、キラル化合物が持つ不斉情報がビナフチル部へ効果的に伝達されコンフォメーショナルキラリティーを持つことを見出し、この現象を利用した新しい絶対配置決定法(「誘起CD励起子法」)を開発した。本法は「CD励起子キラリティー法」における基質の適用制限、すなわち単一官能基を有する化合物には適用できない、という本質的な問題を解決したものである。申請期間内に、1)適用範囲拡大に向けた天然物の構造の影響に関する検討、2)微量分析へのアプローチ、を目的とし検討した。 最終年度である平成25年度には、「誘起CD励起子法」の天然物への応用として、D-, L-サイクロセリンへの適用を検討した。その結果、N-メチル化誘導体のCDスペクトルにおいて、225nm付近のUV吸収領域において分裂型コットン効果を示し、他のキラルアミンと同様に、R体であるD-サイクロセリンは、正の励起子カイラリティーを示し、S体であるL-サイクロセリンは、負の励起子カイラリティーを示した。これは、キラルアミンから得られた誘導体の結果と一致するものである。また、ステロール類にも本法が適用できることを明らかとした(平成23年度)。さらに、微量分析への展開として、新しい試薬の開発を行い、これまでの試薬の約2倍のCD強度が得られたことから、微量かつより確実に絶対配置を決定できることが明らかとなった(平成24年度)。
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