研究課題/領域番号 |
23590028
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
山田 剛司 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (20278592)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 天然有機化合物 / 海洋菌類 / 細胞毒性物質 |
研究概要 |
大阪府泉南郡岬町沿岸において海洋生物を採取し,各々の切片もしくは内臓及びその内容物を6種類の成分の異なる寒天平板培地に塗布し、生えてきたバクテリア、放線菌及び真菌を随時同じ成分の寒天培地の入った試験管(以下スラント)に拾い、のべ約160種類の菌類を分離した。次にこれら菌類をそれぞれ同じ成分の液体培地で3~7日間静置培養後、酢酸エチル-MeOH (5 : 1)で菌体ごと抽出し、得られたエキスについてP388マウスリンパ性白血病細胞及びHL-60ヒト急性骨髄性白血病細胞に対する増殖阻害活性試験を実施し、9種の菌が優位な細胞毒性物質産生菌として残った。同種の菌でも培地が異なれば生長の速度や代謝物の成分が変化し、活性に影響するため、煩雑ではあるが有用な菌の取りこぼしが少ない。次に各々の菌を採取した寒天平板培地と同じ成分で大量培養し(4週間静置培養)、今度はろ過により菌体と培養液に分離し、菌体はMeOHで冷浸、また培養ろ液は酢酸エチルで抽出し、それぞれ2種類のエキスを得た。得られた各2種類のエキスについて先と同様に細胞増殖阻害活性試験を実施し、活性の強く、さらに代謝物の収量が多いものを中心に分離・精製を行った。分離・精製にはShephadex LH-20、シリカゲル及びHPLCなどのクロマトグラフィーを用い、細胞増殖阻害活性試験の活性を指標に進めていき、活性本体の探索を行った。また、活性の弱い分画においても1H NMRスペクトルを測定することにより、構造的見地からの代謝物検出のアプローチを行った。その結果、今回ダイダイイソカイメンより分離した真菌(未同定)の代謝産物より立体化学はまだ不明であるが新規物質を1つ単離している。また数種の既知物質を単離・同定した。その他単離には至ってないものの優位な活性を示す分画が各菌の代謝物に認められており、今後の分離・精製に期待が持てる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的の第一に掲げた種々の海洋動植物からの有用な細胞毒性物質産生菌の分離は、計画通り達成することができた。さらにこれらの菌を大量培養し、その代謝産物について分離・精製を進め、含有成分の検討において有意な知見を得た。これらの菌の中には、強い生理活性を産生するもの、類縁体を多く産生するものなどが認められ、さらなる有用菌の絞り込みをするための情報を得ることができた。また、従来より継代培養を行ってきた細胞毒性物質産生菌の代謝物からは微量成分の補充に成功し、それらの化学構造を決定した。さらに、生理活性を検討し、これらの結果を学会及び論文で公表した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き見出した有用な菌の代謝産物について検討を行い、新規細胞毒性物質の単離及びその化学構造の決定を第一の目標とする。しかる後、得られた生理活性物質及びその類縁体の活性から活性発現に必要なコア構造を明らかにし、それらをシーズとして、新たな機能性リード化合物の開発を目指す。また、活性試験については、これまでの細胞増殖試験に加え、ヒト培養がん細胞パネル試験及び各種分子標的スクリーニング(化学療法基盤情報支援班に依頼)を行い、これら化合物の分子レベルでの作用発現機構の解明及び新たな作用機序の発見を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度以降は大量培養及び大量分取が作業の主となることが予想される。したがって、菌を培養するための培地成分が大量に必要となり、また分離・精製に必要なShephadex LH-20及びシリカゲルなどのカラム充填剤並びにHPLCにおけるセミ分取用パックドカラムの消耗が著しくなる。特に、化合物の分離・精製において再現性を維持する目的でHPLC用パックドカラムの頻繁的な交換は、避けられないため比較的高い予算での購入計画である。
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