研究課題/領域番号 |
23590031
|
研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
川崎 郁勇 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (00234055)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 有機合成 / 複素環化合物 / 不斉合成 / 高効率的 / 環境調和型 |
研究概要 |
含窒素複素環の窒素原子が四級塩化された構造をもつ新規キラルイオン性リガンドとなる種々のイオン化合物を合成し、ルテニウムおよび水素源としてギ酸を用いた触媒的不斉水素移動型還元反応 (CATH) による、プロキラルケトンの不斉還元をおこなうことにより、触媒活性および性能を評価した。その結果、1-[4-[4-[[[(1S,2S)-2-amino-1,2-diphenylethyl]amino]sulfonyl]phenoxy]butyl]-3-methyl-1H-imidazolium mono(trifluoroacetate) salt with trifluoroacetic acid が最も良好な触媒活性を有しており、CATHが良好に進行することを見出した。本CATH反応系はイオン液体を反応媒体とすることで、反応系を繰り返し再利用できる再利用可能なCATH (RCATH) への展開が可能であった。このことによって、複素環の特性を利用した環境調和型有機合成反応の開発に成功した。これらの結果をもとに、上記反応条件を用いる、医薬品等の薬学的に有用な化合物の合成のための基礎的研究を行った。すなわち、光学活性な医薬品の合成の目的のために、標的化合物を現在臨床ではラセミ体で使用されている、喘息治療薬のテルブタリン合成への適応の可能性を検討した。その結果、レゾルシノール水酸基部分に種々の置換基をもつ、アリールクロロメチルケトン類を合成し、本RCATHを適応すると、比較的良好に光学活性第二級アルコールが得られることが分かった。また、この光学活性第二級アルコールは光学活性なテルブタリンの前駆体になることも同時に判明した。上記二つの研究成果は、今後さらに精査する必要があるものの、現段階では平成23年度予定していた研究目的を概ね達成できたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した研究計画によると、平成23年度に次の二つ (1) キラルイオン性リガンドを含む反応活性触媒をリサイクル使用する RCATH 反応系において、生成物の化学収率・光学純度、そして再利用効率において、より優れた反応の条件を見出すための検討を行う。(2) 種々のイオン化合物を合成し、それらのCATH (RCATH) 反応系における、反応触媒としての活性を評価する、を実施する予定であった。 含窒素複素環の窒素原子が四級塩化された構造をもつ新規キラルイオン性リガンドとなる種々のイオン化合物を合成し、ルテニウムおよび水素源としてギ酸を用いた触媒的不斉水素移動型還元反応 (CATH) による、プロキラルケトンの不斉還元をおこなうことにより、触媒活性および性能を評価したところ、1-[4-[4-[[[(1S,2S)-2-amino-1,2-diphenylethyl]amino]sulfonyl]phenoxy]butyl]-3-methyl-1H-imidazolium mono(trifluoroacetate) salt with trifluoroacetic acid が最も良好な触媒活性を有しており、CATHが良好に進行することを見出すことができた。本CATH反応系はイオン液体を反応媒体とすることで、反応系を繰り返し再利用できる再利用可能なCATH (RCATH) への展開が可能であった。ことによって、複素環の特性を利用した環境調和型有機合成反応の開発に成功した。 上記二つの研究成果は、今後さらに精査する必要があるものの、現段階では平成23年度予定していた研究目的を概ね達成できたと評価される。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度までに得られた成果、すなわち (1) キラルイオン性リガンド 4 を含む反応活性触媒をリサイクル使用する RCATH 反応系において、生成物の化学収率・光学純度、そして再利用効率において、より優れた反応の条件を見出すための検討を行う。(2) 種々のイオン化合物を合成し、それらのCATH (RCATH) 反応系における、反応触媒としての活性を評価する、を継続して実施し、より優れた環境調和型高効率的有機合成反応のとなることを目指す。また、上記 (1) および (2) の実験結果をもとに、RCATHでの反応系において、生成物の化学収率、光学純度、そしてリサイクル効率によって活性触媒の IL 層への固定化能の三つの観点から評価を行い、より広範な基質に対応しうる条件を検討する。さらに、医薬品等の薬学的に有用な化合物の合成に、これらの反応系を適応し、既存の合成法と、費用・環境負荷等の面から優劣を比較する。平成24年度以降は、キラル2級アルコールの高効率的な不斉合成反応へ応用し、喘息患者のQOLの向上に寄与を目指して、抗喘息薬の活性鏡像異性体合成に応用する。また、キラル2級アルコールは、抗喘息薬以外にも、例えば鎮痙剤、抗真菌薬、鎮咳薬、抗生物質、心機能改善薬、昇圧剤、血管収縮薬、抗マラリア薬等極めて多岐に亘る医薬品の構成部分および合成中間体となり得るため、広くその応用を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費内訳は、間接経費360,000円、直接経費1,200,000円である。このうち、直接経費1,200,000円から、合成試薬、反応溶媒、有機溶媒、ガラス器具等の消耗品に820,000円を、研究成果公表、共同研究の実施等の旅費・その他として380,000円を使用することを計画している。
|