研究課題/領域番号 |
23590034
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
加来 裕人 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (90299339)
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キーワード | 精密分子認識 / 包接錯体 / 光学分割 / テトラフェニレン誘導体 / フェネチルアミン / デラセミ化 / X線結晶解析 |
研究概要 |
精密分子認識を有する新規光学活性ホスト分子の候補化合物として,光学活性テトラフェニレン誘導体を選択し研究を開始している.本年度に示す成果は以下のとおりである. 1.2,7,10,15-位に水酸基を導入した2,7,10,15-テトラヒドロキシテトラフェニレン(THTP)の合成は,3-ブロモアニソールを出発原料とした二度の対称面でのカップリング反応により達成している.しかし,大量合成時の低収率が問題となっていた.そこで,二度目のカップリング反応では,基質濃度(0.067M)が重要であることを突き止め,大量合成時の収率改善に成功した. 2.THTPの光学分割には,(S)-フェネチルアミンを用いることで成功している.この際,(+)-体のTHTPとの包接錯体が針状晶として得られた.この包接錯体から純粋な光学活性THTPが供給できる.また興味深いことに,(S)-フェネチルアミンは(-)-体のTHTPとも包接錯体を形成する(板状晶)ことが分かり,同一のフェネチルアミンを用いて,純粋な(-)-THTPの供給も可能となった. 3.光学活性THTPをホスト分子に用いて,種々のアミン類に対する分子認識能を検討した.その結果,様々なアミン類の光学分割に成功し,純粋な光学活性アミンの得ることができた.例えば,ラセミ体のフェネチルアミンをゲストに用いた場合,(S)-体および(R)-体のフェネチルアミンをそれぞれ96%eeの光学純度で得ることに成功した. 4.光学活性THTPとフェネチルアミン類との包接錯体の分子認識様式を解明する目的で,包接錯体の単結晶X線結晶構造解析を行った.これにより,ホスト分子の持つ水酸基とゲストのアミノ基窒素との間に働く分子間水素結合の他,π-π相互作用など弱い相互作用が重要な役割を演じていることが分かった. 5.多くのTHTP誘導体の合成に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書上,平成23,24年度に示した計画は概ね順調に進展していると考える. その根拠は,1)テトラフェニレン誘導体の効率的調製の開発,2)光学活性四置換テトラフェニレン誘導体の調製,3)フェネチルアミン類に対する,光学活性ホストとしての利用,4)単結晶X線結晶構造解析を用いた包接錯体中の分子認識現象の解明,5)新規ホスト分子候補化合部として種々のTHTP誘導体の合成等が行えたことによる.
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今後の研究の推進方策 |
得られた光学活性2,7,10,15-テトラヒドロキシテトラフェニレン(THTP)が,アミン類に対する光学分割剤として機能することが明らかとなったので,平成25年度はゲスト分子の適用範囲を広げるため,他の官能基(例えば,アルコールやカルボニル化合物)を持つゲストにも適用したい.また,THTPの活性が十分満足できるものとなっていないことから,新たに合成したTHTP誘導体の光学分割剤としての可能性を探りたい. 応募者が精力的に開発してきた,熱力学的な平衡条件下,分子認識現象を用いた光学活性体供給法である「デラセミ化法」に新規ホスト分子を適用したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
物質供給を考えた場合,光学活性体を含む数多くの試薬及びガラス器具が必要となる.これにかかる費用が必要となる.また.新規ホスト分子を用いた光学分割法およびデラセミ化法の活性評価に必要な,光学活性カラムの購入に充てたい. さらに,本年度の成果を広く公開するために,英語論文校閲,論文投稿にかかる経費,学会発表費として使用する.
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