研究課題/領域番号 |
23590037
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
渡辺 匠 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 主席研究員 (80270544)
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研究分担者 |
柴崎 正勝 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 所長 (30112767)
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キーワード | 有機化学 / 触媒的不斉反応 / 全合成 / 抗結核薬 / 天然有機化合物 |
研究概要 |
caprazamycinは放線菌由来の核酸系抗生物であり,従来の結核菌のみならず超多剤耐性結核菌XDR-TBに対しても良好な抗菌活性を示すCPZEN-45の前駆体でもある.本研究は,新たな抗XDR-TB剤開発を目指した構造活性相関研究に適用可能なcaprazamycinの効率的な触媒的不斉合成法の確立を目的とした. 24年度は既に確立済みの触媒的不斉チオアミドアルドール反応によるβ-ヒドロキシエステル部位の構築法に関し,基質構造等を最適化することで93%eeまで不斉収率を向上させた.二核ニッケル-光学活性シッフ塩基錯体を用いた3-メチルグルタル酸無水物の触媒的不斉アルコリシスによる光学活性モノエステルの調製について,合成中間体としてより適切なモノベンジルエステルとしたところ88%eeで生成物を得た.これらのフラグメントのカップリング,およびラムノース部位の導入を経て,側鎖パート(western zone)の触媒的不斉合成を達成した. 続いてジアゼパノン環上のβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸構造の立体選択的構築を目指し,当研究室で開発された触媒的不斉anti-選択的ニトロアルドール反応の適用を試みた.ベンジル基で保護された2-ニトロエタノールとシンナムアルデヒドを基質としてNd-不斉アミド配位子錯体を利用し反応条件を最適化を行ったところ,74%の収率,15:1のジアステレオ選択性かつ94%eeのエナンチオ選択性でanti-付加体を優先的に得た. 更に,前年度確立したisocyanoacetateアルドール反応においては,基質アルデヒドのウラシル部位を無保護とした場合でも収率・ジアステレオ選択性を損なうことなく付加体が得られた.現在は全合成の完成に向け,各フラグメントの官能基変換とそれに続くカップリング・脱保護を検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で鍵となる4箇所の立体選択的反応は全て検討を終了した.合成に必要な光学活性な中間体が得られたので,数工程の検討でcaprazamycin初の触媒的不斉全合成を達成する見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
残り約1年の研究期間で,大きなトラブルがなければ全合成を達成可能と考えている.より精力的に実験を実施し,完成を急ぐ.また,年度後半にはcaprazamycinとその誘導体であるCPZEN-45の作用機序に基づく構造活性相関研究を展開すべく,全合成的手法を用いて各種関連化合物を合成する.
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬・器具等の消耗品購入を中心とし,7月フランス・マルセイユで開催のEuropean symposium on Organic Chemistryにおける口頭発表時,および3月熊本で開催予定の日本薬学会・第134年会発表時の旅費等を計上する.
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