ヌクレオリンは核小体に局在する蛋白質として知られるが、近年の研究で核質・細胞質・細胞表面にも存在していることが明らかになっている。細胞表面のヌクレオリンはウイルスの分子標的など、リガンド受容体として機能し、またがん細胞のマーカーの一つである。本研究では抗がん剤として開発中の核酸医薬AS1411の、ヌクレオリンによる細胞内取り込みにおける分子認識機構を検討した。ヌクレオリンによるAS1411の認識にはRNA結合性ドメイン(RRM1~4およびGARドメイン)が関与することは既知であるが、AS1411は4本鎖構造を特徴としており、その認識機構は未知である。ドミナントに結合するドメイン解明のため、ヌクレオリン本来のドメインの連続性を維持したままドメイン分割し、一群の部分蛋白質を用意した。一方AS1411の4本鎖構造はこれまで、主に2本のDNA鎖によって形成されていると考えられてきたが、アニール条件により単独鎖由来の4本鎖構造も含む、分取可能な複数のピークに分離できることが報告された。そこで分取の再現性を確認し、代表的なピークも分取した。以上を用いてバンドシフトアッセイを試みたが、結合の確定的な判定は難しかった。AS1411の4本鎖構造形成は1塩基付与でも容易に影響をうけてしまうことから、BIAcore等の別手法によりヌクレオリンとの結合を今後判定する必要がある。
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