研究課題/領域番号 |
23590043
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中園 学 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90336074)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 蛍光 / インドリルマレイミド / DNA / 分子科学計算 |
研究概要 |
DNAに親和性を有する蛍光化合物の基本構造として、分子内にインドールとマレイミドを有するIndolylmaleimide誘導体を選択し、その対称型及び非対称型の合成を企画した。本年度、長波長蛍光発光(550 nm以上)を有する非対称型Indolylmaleimide誘導体の合成を目的とした。分子設計として、マレイミド部位のC=C結合からのπ-共役の延長に着眼した。N-メチル化されたIndolylmaleimideのブロム体に鈴木-宮浦カップリングを用いて、各種ボロン酸誘導体によりbiphenyl、bisthiophene及びpyreneの導入を行った。これらのIndolylmaleimide誘導体の極大蛍光発光波長は、全て550 nm以上であり、ストークスシフトは106 nm以上であった。プロトン性溶媒であるメタノール及びエタノール中、それらの蛍光強度は明らかに減少した。合成したIndolylmaleimide誘導体の量子収率は0.13以下と低かった。そこで、新たにcarbazoleを導入したところ、アセトニトリル中で量子収率は0.5となった。更に、Indolylmaleimide誘導体のインドール部位のNH基へのクマリンの導入も行った。 最も極大蛍光発光波長(597 nm)の大きい3-bithiophene-4-(1H-indol-3-yl)-2,5-dihydro-1-methyl-2,5-pyrroledione(BDMP)の分子科学計算(MS-CASPT2, cc-pVDZ)結果より、HOMOはインドール部位に、LUMOはマレイミド部位に局在した。このことから、BDMPは、分子内電荷移動(Intramolecular charge transfer, ICT)が生じていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、プローブ合成に取り組んだ。企画していた非対称型Indolylmaleimide誘導体の簡便な合成法をほぼ確立できた。他の誘導体も本合成法で合成可能と考えられる。合成した化合物の蛍光量子収率はさほど高くはなかった。更に合成した化合物の中で最も蛍光発光波長の大きい分子について分子科学計算も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、対称型及び非対称型を含め数十種のIndolylmaleimide誘導体を合成している。DNAとの親和性を向上させるために、アミジノ基を有したIndolylmaleimide誘導体を合成する予定である。DNAとの親和性評価は、ポリA、ポリGを含めた様々な配列を有した15塩基対(二本鎖を形成するに必要な塩基対)のDNAを用いる(市販購入が可能)。緩衝液中(pH 7)、アニーリング(急激に温度(約90℃)を上昇させ、ゆっくり室温にもどす(約3時間))により調製した二本鎖DNAを石英セルに入れ、緩衝液に溶解した化合物を加え蛍光変化を測定する。DNAとの蛍光応答が得られた化合物につき、生細胞でのイメージングを評価する予定である。Indolylmaleimide誘導体は細胞透過性は高いと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在のところ、合成及び測定に要するガラス器具及び実験機器は備わっている。従って、予定している化合物の合成及び測定に必要な薬品費が出費の多くを占めると考えられる。使用するほとんどの薬品は購入可能であり、価格は一万円以下である。昨年度の繰越金である1,087,283円は、エバポレーターの購入に支出する予定である。実験の進行状況にもよるが、実験結果を国内外(日本、スイス)の学会等で発表する予定である。従って、学会発表に関わる宿泊費及び旅費が発生すると思われる。
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