研究課題/領域番号 |
23590043
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中園 学 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90336074)
|
キーワード | 蛍光 / インドリルマレイミド / DNA |
研究概要 |
24年度、15種の非対称型蛍光性インドリルマレイミド(IM)誘導体の分子設計及び合成を達成した。グリニヤール反応と鈴木カップリングによる非常に簡便な合成法によりIM誘導体の合成はなされた。IM誘導体のマレイミド部位の炭素―炭素二重結合の一方の炭素にフェニル基、ビニル基、ナフチル基及びピレンを含め様々な芳香族化合物を導入可能であった。インドールのNH基へのBoc基の導入も行った。更に、ウィッティヒ―ホルナー反応を用いてπ-共役の延長にも試みた。ジメチルホルムアルデヒド及びアセトニトリル溶液中、合成したIM誘導体の蛍光測定を終了した。その結果、ストークスシフトが100 nm以上かつ550 nm以上の長波長蛍光発光を有する多くの非対称型IM誘導体を見出した。ジメチルホルムアルデヒド中、合成したIM誘導体は、蛍光極大波長が520 nmから600 nmの範囲のマルチカラー蛍光を示した。マルチカラー蛍光を有する非対称型IM誘導体の開発を達成できたことは、今後のIM誘導体の分子設計において意義ある情報を提供している。IM誘導体のマレイミド部位の炭素―炭素二重結合からのπ-共役の延長による吸収極大波長及び蛍光極大波長の増加が明らかに見られた。化合物の構造と蛍光発光特性との関連に少しずつではあるが理論性が見出されている。合成したIM誘導体中、いくつかの化合物は特定のタンパクとの親和性が期待され、新たな研究展開が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、予定したすべての非対称型インドリルマレイミド(IM)誘導体の合成を達成した。マレイミド部位の炭素―炭素二重結合の一方の炭素に様々な芳香族化合物を導入可能であった。蛍光測定の結果、ストークスシフトが100 nm以上かつ長波長蛍光発光(550 nm以上)を有する非対称型IM誘導体を見出した。蛍光極大波長が520 nmから600 nmの範囲のマルチカラー蛍光を示した。マルチカラー蛍光性の非対称型IM誘導体の報告は今までにない実験結果であろう。この結果は実験計画時には予測できなかったことであるが、蛍光性IM誘導体の合成において意義深い情報を提供している。現在のところ、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、サケ由来DNA(シグマ社)を購入し、様々なDNA濃度での二本鎖形成のアニーリングの最適化を行う。合成したIM誘導体のDNAとの蛍光応答を評価する。その結果により、DNAとの親和性が明らかになるとと考えられる。十分な親和性が得られなっかた場合、DNAとの親和性を強固にするためにIM誘導体にアミジノ基を導入することも予定している。DNAとの親和性のあるIM誘導体に関し、超音波処置後の溶液をHPLCで分取後、MALDI-TOF MS測定を行い、DNA切断能の評価を行う。DNA切断が見られた場合には、選択性があるか否かが判明すると考えられる。現在までに対称型及び非対称型を含め多くのIM誘導体を合成しており、DNAとの親和性と構造相関が明らかとなると予測される。
|
次年度の研究費の使用計画 |
合成またはHPLC測定に使用する薬品費が支出される。現在までに合成及び蛍光発光特性に関し、いくつかの意義ある実験結果を得ている。そこで、国際及び国内学会で発表する予定であり、学会発表に要する参加費及び旅費が発生する。本年度は、最終年度にあたり、研究成果の論文投稿を予定しており印刷費が支出されると予測される。
|