現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに我々が開発したFol-PαC(G3)は、市販の核酸医薬導入試薬に比べて細胞障害性が極めて低く、核酸導入効率および安全性に優れることを報告した。しかし、Fol-PαC(G3)/siRNA複合体を担癌マウスに静脈内投与後のRNAi効果は十分とは言えず、かつその効果の再現性が低いことが問題点として浮かび上がった。その原因として、Fol-PαC分子は、血中でsiRNAと解離し、腫瘍組織へのデリバリー効率が低いこと、また、異なる置換度のFol-PαC基およびα-CyD基を有する混合物であるため、その分子構造がロット間で相違したためと推定された。平成24年度までに、我々は血中でキャリアとsiRNAが解離せず、安定な複合体として腫瘍組織および癌細胞へ到達可能なキャリアの構築を企図し、デンドリマーの世代を第3世代から第4世代に変更し、従来よりもsiRNAとの相互作用が強いFol-PαC(G4)の合成を行った。PEG化葉酸の置換度(DSF)の異なる4種のFol-PαCs(G4, DSF2, 4, 6, 11)を調製し、in vitroにおけるRNAi効果を検討したところ、Fol-PαC(G4, DSF2)が最も優れたRNAi効果を誘導した。さらにFol-PαC(G4, DSF2)は、50%血清共存下においても、有意なRNAi効果を誘導可能であった。さらに、担がんマウスにおいて、Fol-PαC(G4, DSF2)/siRNA複合体を静脈内に投与後のRNAi効果は、Fol-PαC(G3)よりも優れることが示唆された。これらの結果より、Fol-PαC(G4, DSF2)はsiRNAキャリアとして有用である可能性が示唆された。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を遂行するためには、遺伝子の発現を特異的に抑制するための機能性核酸である siRNAが必要であり、標的遺伝子としてルシフェラーゼ、Stat3、PLK1の3種を対象とし、継続的に研究を行うため、siRNAの購入が毎年必要である。次に、Fol-PαC(G4)の合成のため、PAMAMデンドリマー、α-CyD、各種PEG、葉酸の購入が必要である。また、α-CDE, Fol-PαCの合成試薬および精製試薬が必要である。さらにそれら結合体の構造解析および物理化学的性質を明らかにするための各種試薬・器具が必要である。次に in vitroにおける RNAi効果を培養細胞(KB細胞, 4T1細胞, MCF7細胞、A549細胞)にて行うため、細胞培養試薬・血清・培養器具ならびにこれら細胞を細胞バンクから購入する必要がある。また、RNAi効果をリアルタイムPCRおよびWestern blotにて評価するため、リアルタイムPCR試薬および抗体等の購入が必要である。細胞障害性の研究のため、WST-1 試薬等が必要である。また、in vivoでのRNAi効果、抗腫瘍効果、体内動態、安全性に関する検討を行うため、実験動物としての正常マウスの購入およびヌードマウスの購入が必要である。また、体内動態の研究のため、ラジオアイソトープおよび各種蛍光試薬が必要である。なお、実験を遂行するための機器・施設等は全て整っているため、設備備品の購入は必要でない。さらに、国内での研究成果の発表のための旅費、海外での研究成果の発表のための旅費が必要である。さらに学術雑誌への論文投稿料を必要とする。なお、各品目が研究経費の90%を超えるものや特に大きな経費を占める経費はない。
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