研究概要 |
Smith-Lemli-Opitz症候群 (SLOS) の病態解析を目標にセロトニン (5HT) の多点分子認識ESIラベル化分析法を検討したが,試薬由来の妨害物質が除去できないこと,それに起因してLC/ESI-MS/MSで高感度分析が困難なことが判明した.そこで,5HTの最終代謝産物である5-hydroxyindole acetic acid (5HIAA) のレベルがSLOSで変動するとの仮説を立て,その尿中分析法を開発に切り替えた.すなわち,5HIAA用新規高感度化試薬,1-[(4’-dimethylaminophenyl)carbonyl]piperazine (DAPPZ) をデザイン・開発し,尿分析に適用したところ,共存物質の妨害を受けることなく,5HIAAのピークを明瞭に検出することができた. 先天性代謝異常症診断マーカー分子の中には,3-hydroxypalmitic acid (3-HPA) に代表されるキラル化合物も存在し,精密な診断には対掌体の弁別測定必要な場合が考えられる.このことから,新たにESI活性キラル誘導体化試薬,(S)-1-(4-dimethylaminophenyl-carbonyl)-3-aminopyrrrolidine (DAPAP) を開発し,長鎖3-ヒドロキシアシル-CoA 脱水素酵素 (LCHAD) 欠損症診断のための3-HPA分析法を開発した. 最近,新生児のビタミンD不足がくる病や骨軟化症などの骨疾患のみならず,将来の糖尿病,多発性硬化症,統合失調症などの危険因子となることが報告され,その評価法の確立が切望されている.そこで,新生児濾紙血を用いるビタミンD供給状態評価法 (潜在的ビタミンD欠乏症診断法) を開発した.すなわち,新たに4-(4’-dimethylaminophenyl)-1,2,4-triazoline-3,5-dione (DAPTAD) を多点分子認識ESIラベル化試薬として開発し,超高感度かつ不活性妨害代謝物である3-エピ体と完全分離できる新規定量法を確立した.そして,札幌市生まれの新生児濾紙血に本法を適用し,被検児の半数以上が中程度及び深刻なビタミンD不足 (4.5 ng/mL以下) であることを報告した.
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