研究概要 |
噴霧凝固造粒法確立のため、胃溶性高分子と低融点物質を使用した苦味マスキング技術と腸溶性高分子と低融点物質を使用した大腸デリバリー技術を中心に検討した。苦味マスキング技術では本法をより簡素化した溶融造粒法により、アセトアミノフェンをモデル物質とし、実施した。pH4.0とpH6.5の溶出試験結果では、著しいpH依存性の放出制御が確認され新たな機能性を有する顆粒の製造が可能となった(Int.J.Pharm,431(2012)70-77). また、新規pH感受性ポリマー水分散液であるMethyl Methacrylate and Diethylaminoethyl Metacrylate Copolymer Dispersion に着目し, 200 μm以下の微粒子にコーティングし,その苦味マスキング効果を評価した.その結果、本剤は少量で 高い苦味マスキング効果を付与できるポリマーであることが示唆された(日本薬剤学会第27年会(2012) 要旨集 p297)。現在、この200 μm以下の核粒子を噴霧凝固造粒法と溶融造粒法により調製する手法に取り組んでいる。大腸デリバリー技術については5-aminosalicylic acid(5-ASA)をモデル物質とし、低融点ワックスとして, グリセリン脂肪酸エステル(TR-FB) を, 腸溶性高分子にはmethacrylic acid copolymer S (Eudragit®S 100; S-100) を用い、噴霧凝固造粒法により調製を実施した。粒子の調製は, TR-FBとS-100を独立因子として, 2因子3水準完全実施要因計画に従い、評価は3種類の溶出液 (pH4.0,pH6.8,pH7.4) を用いて行った。その結果、目標とする粒子を設計することができた(日本薬学会東海支部合同学術大会2012 要旨集p108)。
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今後の研究の推進方策 |
苦味マスキング技術および大腸デリバリー技術について最適処方を決定し、ラットを利用した吸収性試験を実施し、放出制御能を評価する。 また、苦味マスキングを達成する放出制御製剤として実用化されているワックスマトリックスを対象にし, 拡散理論を基礎し既に構築している①拡散係数の時間依存性を考慮したモデル、②拡散係数の位置, 時間及び固体薬物の溶解を考慮したモデル(Int.J. Pharm. 428 (2012): 82-90)を当てはめ、本剤形の放出機構を数理学的に解析し昨年度、新しいテーマとして検討を開始した放射X線CTを用いたマトリックス内の構造解析により、その信頼性を検証していきたい。
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