我々は、細胞内Caストアの枯渇によって活性化される細胞膜に発現するCaチャネルであるOraiについて、アレルギー担当細胞であるマスト細胞での役割を検討してきた。Oraiの3つのサブタイプのうち、Orai2だけが分泌小胞に局在することを明らかにした。 平成25年度は、Orai2が細胞刺激に伴う細胞内CaストアからのCa放出を制御するメカニズムについて検討した。そのために、Orai2と相互作用するTRP(transient receptor potential)チャネル、TRPC1との相互作用を検討したが、マスト細胞におけるOrai2との相互作用を確認することはできなかった。そこで、Orai2による細胞内CaストアからのCa放出制御にOrai2のCaチャネルとしての作用、およびOraiの活性化に必須のタンパク質STIMとの相互作用が必要であるかどうかを検討することとした。そのために、STIMなしに恒常的活性化型となる変異をOrai2に導入したもの(Orai2(G135D))、およびSTIMとの相互作用ができなくなる変異をOrai2に導入したもの(Orai2(W113P))を発現させた。その結果、恒常的活性化型をマスト細胞に発現させると、恒常的なCa流入による細胞毒性により、メカニズム解明に至らなかった。STIMとの相互作用ができないものについては、現在検討を続けている。 研究期間全体として、分泌小胞に局在するOrai2がマスト細胞の抗原刺激によるエクソサイトーシスを正に制御すること、抗原刺激による細胞内CaストアからのCa放出は制御するが、タプシガルギンによるCa放出には影響しないこと、細胞外からのCa流入への関与は少ないことを明らかにした。CaストアからのCa放出の機構については明らかにならなかったが、Oraiの新しい機能を見出した意義は大きい。
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