研究課題/領域番号 |
23590049
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
西村 千秋 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (70218197)
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キーワード | 蛋白質 / 生体分子 / 超分子化学 / ウイルス / 分子認識 / 薬学 / 核酸 / 感染症 |
研究概要 |
前年度は、p17マトリックス蛋白質、p24カプシド蛋白質の発現、R1、R2、異核NOEなどの緩和実験、CLEANEX-PMやHD交換を用いた溶媒への露出度の測定を行ってきた。本年度は研究をまとめるために、まずp24カプシド蛋白質においては、C端にタグのある蛋白質、N端にタグのある蛋白質の化学シフト値の違いを調べた。化学シフト値の違いは、主にN端とC端のアミノ酸残基、さらにDヘリックス近傍の60-80においてのみ、変化が見られた。タグの影響が配列上真ん中の60-80に伝わっているのは興味深い。また、p24は通常のタグのない条件では2量体構造をとる。我々はタグをつけてp24蛋白質を発現させたが、そのタグがあるために単量体状態で存在しているように思われる。さらにpHによる化学シフト値の変化を調べた。pHを変化させたときには、N端の残基ほど化学シフト変化がみられ、C端の残基ほど化学シフト変化が少なかった。またp24と遺伝子配列上並んで存在するp17マトリックス蛋白質においても、同様にpHの化学シフトへの影響を調べた。p17の場合には、それぞれABCDEヘリックスの領域において化学シフト変化が観測されたが、C端の構造のない部分では、pHが変化してもほとんど化学シフトは変化しなかった。今後は、前年度のデータとまとめて、柔軟な揺らぎ構造の存在に関して議論していく。また本年度から、他のウイルス由来天然変性蛋白質の解析を始めるために、牛に感染するウイルス融合蛋白質と、はしかウイルス蛋白質の発現を始めた。本年度は風疹が日本中に流行する傾向にあり、はしかウイルス蛋白質の研究が急がれている。すでに、シグナル帰属用の3DNMRスペクトルの測定と、CLEANEX-PM実験の一部は終了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度の結果をまとめるための実験と、来年度に進める新たな標的蛋白質の作製をおこなった。来年度中には、その新しい蛋白質の解析を進行させ、天然変性蛋白質に関わる重要な知見が得られると推測している。新しく蛋白質を作るためにやや時間がかかってしまったが、とても順調に進んでいると思う。投稿論文も早急に仕上げる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
NMRによって、緩和実験やアミドプロトン交換実験などを駆使して、天然変性蛋白質を性格づけることがまず重要である。天然変性蛋白質の解析も数種おこない、何か共通の、あるいは、細かな天然変性蛋白質間での違いが見つかれば、さらに有意義な結果が得られると思う。天然変性蛋白質は薬のターゲットとなる蛋白質であり、構造情報に基づいて、病気の治療を目指していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に、一部研究費を繰り越した。平成25年度分は、直接経費総額260万円程度となるが、物品費に160万円、旅費に40万円、その他に60万円程度をあてる予定である。
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