研究課題/領域番号 |
23590052
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
四宮 一総 日本大学, 薬学部, 准教授 (70215995)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 分離分析 / クロマトグラフィー / 液-液分配 / 分析科学 / 薬学 |
研究概要 |
向流クロマトグラフィー(CCC)は、固定相に充填剤を用いない液-液分配クロマトグラフィーである。我々は、分離効率の向上を目的にテフロンチューブをコイル状に巻き付けて作製したカラムが自転と共に公転する惑星運動(planetary motion)を行う高速向流クロマトグラフ装置(HSCCC)を製作したが、その過程でカラム回転に伴う送液チューブのねじれ解消の新機構を考案した。そこで、この機構を用いて、従来の太陽-地球の関係に例えられる惑星運動に代わる太陽-地球-月の関係にある衛星運動(satellite motion)を行う新しいHSCCC(coil satellite centrifuge:CSC)を考案・設計した。 太陽軸周りを回転する公転フレーム上に惑星軸周りを回転する自転フレーム(地球)を取り付け、この上にカラム(月)を設置する。送液チューブは太陽軸→惑星軸→衛星軸の順に配管され、各角速度をω1、ω2、ω3とすると、装置上部からS字状に導入した場合はω1 + ω2 + ω3 = 0 … (1)、装置下部からU字状に導入した場合は-ω1 + ω2 + ω3 = 0 … (2)の関係が成立するとねじれは生じない。従って、S字状の送液チューブの配管では、第1モータの駆動によりω1の回転を発生させると、(1)式から、第2モータの駆動でω2 = -(ω1-ωA)、ω3 = -ωA(ωAは任意の角速度)となる。 遠心力場での物理的な力は複雑かつ大きくなることが予想され、カラム内での二液相の攪拌、分相の頻度が増加すると考えられる。その結果、界面張力の差の大きい有機溶媒-水系二相溶媒での分離効率の向上が期待される。また、従来の非同期型コイル・プラネット遠心機とは異なり、CSCでは惑星軸の自転速度(ω2)は太陽軸の公転速度(ω1)に依存しないため、制限のない非同期的な回転が可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では衛星運動型高速向流クロマトグラフ装置(coil satellite centrifuge:CSC)の装置製作を終了し、CSCを用いて極性の異なる二相溶媒による物質分離の基礎検討を行う予定であったが、現在は装置製作中の段階にある。これは、公転フレーム、自転フレーム及びカラムの時計廻り、反時計廻りの回転方向の違いによる様々な組合せを可能にし、多様な分離実験を行うための装置設計に多大な時間を要したためである。また、自転フレームやカラムへの効率的な動力伝達機構の設計にも多くの時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
衛星運動型高速向流クロマトグラフ装置(coil satellite centrifuge:CSC)の装置を完成させ、当初の計画に従い、極性の異なる二相溶媒による物質分離の基礎検討を行う。また、遅れを取り戻し、次年度の当初の計画にある形状の異なる各種コイル状カラムによる物質分離効率の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
装置代、装置稼働環境整備代(装置設置台、カラム作製用物品(テフロンチューブ、粘着テープ、接続ジョイントなど))、分離実験用試薬代(分離用試料、二相溶媒用試薬など)、分離実験用物品代(送液用テフロンチューブ、接続ジョイント、分画用試験管、吸光度測定用石英セル、チャート用紙など)等への使用を計画している。
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