研究課題/領域番号 |
23590054
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
米谷 芳枝 星薬科大学, 薬学部, 教授 (10231581)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ターゲティング |
研究概要 |
がん化学療法の究極的な製剤は、腫瘍への選択性を付与したターゲティング製剤である。ナノ粒子製剤は腫瘍近傍の血管が漏れやすくなっているのを利用して、抗がん薬を腫瘍に効率的に取り込ませることができる。さらに、このナノ粒子製剤をがん細胞で特異的に発現する受容体のリガンドで修飾をすることで、がん細胞レベルでのターゲティングが可能になると考えられる。 本研究では、ナノキャリヤーとリガンドとの新規な修飾方法を確立して、がんターゲティングナノ製剤の開発を目的とする。 昨年度は、リガンド結合高分子化合物の合成を行った。葉酸ポリLリシンは葉酸と分子量の異なるポリLリシンを結合して合成し、葉酸ポリエチレングリコール(PEG)ポリLリシンの合成も行った。次にリガンド結合高分子がリポソームに吸着するかをリポソームの表面電位測定によって評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍でその受容体が過剰発現していることが知られている葉酸とオクトレオチドをリガンドとして、リポソームをナノキャリヤーとして用いて、以下の新規な方法でリガンド修飾した。 まず、葉酸ポリLリシンは葉酸と分子量1万から7万のポリLリシンを結合して合成し、葉酸ポリエチレングリコール(PEG)ポリLリシン(15mer)の合成も行った。葉酸の修飾率は2種類とした。その結果、葉酸PEGポリLリシン(15mer)の合成はできたが、粒子径200nmのリポソームに吸着することはできなかった。 また、オクトレオチドPEG脂質は外注して取得し、リポソームに吸着することをリポソームの表面電位測定によって確認した。以下の細胞取り込み実験のために、リポソームには蛍光があるドキソルビシンを封入した製剤とし、細胞へのリガンド選択的な取り込み試験をフローサイトメーターで行い、作製したリガンド修飾ナノキャリヤーが、in vitro細胞で選択的な取り込みを示す最適なリガンド修飾方法と修飾密度を決定した。
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今後の研究の推進方策 |
これらの2種類のリガンド修飾ナノリポソームに、抗がん薬を封入してナノ製剤化する。オクトレオチド修飾ナノ製剤では、イリノテカンを封入し、葉酸修飾ナノ製剤では、ドキソルビシンを封入する。 in vitroでの細胞で選択的な取り込みを細胞毒性試験からも評価する。甲状腺髄様癌であるTT細胞と、咽頭かんであるKB細胞の担がんマウスにそれぞれのナノ製剤を静脈内投与して、腫瘍集積性と体内動態を調べる。 in vivo薬効試験では、担がん動物にナノ製剤を静脈内投与して、抗腫瘍効果を評価する。リガンド修飾ナノ製剤のターゲティング能を抗腫瘍効果、副作用の確認と治療後の組織の免疫染色によって行う。製剤の毒性試験は、投与後2週間までの急性・亜急性毒性を血清学的、病理学的に詳細に解析し、ターゲティング製剤の副作用についての基盤情報を得る。製剤のターゲット性の評価は、以上の抗腫瘍効果と免疫組織染色した組織像とを比較することで,ターゲットナノ製剤が目的とする腫瘍細胞に正確に送達できているかについて評価する.さらに、in vivo腫瘍集積性、組織学的解析、薬物動態試験、副作用、治療効果より、製剤の総合的ターゲット評価ついて、得られた結果を取りまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、ターゲットナノ粒子の作製のための各種の脂質とシリカ粒子、蛍光色素、抗がん薬、実験動物、および免疫染色に用いる各種試薬を必要とします。 昨年度から継続して、葉酸結合ポリLリシンと葉酸結合PEGポリLリシンは、当研究室で合成し、オクトレオチド結合PEG脂質は外注します。これらの経費を計上します。リポソーム作製に使用する卵黄ホスファチジルコリン、コレステロール等の脂質、およびシリカ材料、各種反応試薬、担がんマウス作成のために細胞培養試薬を購入します。 動物実験では、腫瘍ターゲットナノ製剤についての評価・検討のために担がんマウスを使用する予定にしています。1年間でSPFマウス約80匹が必要とされると考えています。オクトレオチド修飾ターゲットナノ製剤についての検討では、甲状腺髄様癌と副腎のがんである褐色細胞腫を自然発症するトランスジェニックマウスを使用する予定にしていますが、これまでの検討で蓄積されたデータを基に実験を実施する予定にしていますので、約40匹で検討可能であると考えています。 その他,免疫染色に使用する抗体や試薬の購入を予定しています。
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