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2012 年度 実施状況報告書

リガンドの新規修飾方法によるがんターゲティングナノ製剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23590054
研究機関星薬科大学

研究代表者

米谷 芳枝  星薬科大学, 薬学部, 教授 (10231581)

キーワードターゲティング
研究概要

がん化学療法の究極的な製剤は、腫瘍への選択性を付与したターゲティング製剤である。ナノ粒子製剤は腫瘍近傍の血管が漏れやすくなっているのを利用して、抗がん薬を腫瘍に効率的に取り込ませることができる。さらに、このナノ粒子製剤をがん細胞で特異的に発現する受容体のリガンドで修飾をすることで、がん細胞レベルでのターゲティングが可能になると考えられる。本研究では、ナノキャリヤーとリガンドとの新規な修飾方法を確立して、がんターゲティングナノ製剤の開発を目的とする。
2種類のリガンド修飾ナノ製剤を調製した。葉酸高分子被覆ナノ製剤では、負電荷リポソームにドキソルビシンを封入した後、正電荷葉酸ポリLリシンを表面吸着させた。オクトレオチド修飾ナノ製剤では、イリノテカンを封入した中性電荷リポソームにオクトレオチドPEG脂質溶液を添加後、インキュベーションしてリポソームに挿入した。
リガンド修飾ナノ製剤が、in vitro細胞で選択的な取り込みを示す最適なリガンド修飾密度を、フローサイトメーターによる測定と細胞毒性試験によって決定し、ターゲティング能を確認した。
In vivoでは、マウスにそれぞれのナノ製剤を静脈内投与して体内動態を調べた。その結果、葉酸高分子被覆ナノ製剤は、未被覆リポソームとほぼ同様な血中濃度パターンを示したが、高投与量を投与すると毒性がみられた。また、in vivo薬効試験では、担がん動物に葉酸修飾ナノ製剤を静脈内投与して、抗腫瘍効果を評価した結果、未修飾製剤と有意な差は見られなかった。従って、リガンド修飾ナノ製剤は細胞内に受容体を介して取り込まれた後に、細胞内で十分に放出していない可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

葉酸高分子被覆ナノ製剤では、負電荷リポソームにドキソルビシンを封入した後、正電荷葉酸ポリLリシンを表面吸着させた。オクトレオチド修飾ナノ製剤では、イリノテカンを封入した中性電荷リポソームにオクトレオチドPEG脂質溶液を添加後、インキュベーションしてリポソームに挿入した。
作製した2種類のリガンド修飾ナノ製剤が、in vitro細胞で選択的な取り込みを示す最適なリガンド修飾密度を、フローサイトメーターによる測定と細胞毒性試験によって決定し、ターゲティング能を確認した。透析膜を用いたリガンド修飾ナノ製剤からの薬物放出性実験からは、リガンド未修飾ナノ製剤と放出性は変わらないことが明らかになった。
In vivoでは、マウスにそれぞれのナノ製剤を静脈内投与して体内動態を調べた。その結果、葉酸高分子被覆ナノ製剤は、未被覆リポソームとほぼ同様な血中濃度パターンを示したが、高投与量を投与すると毒性がみられた。これは、葉酸高分子被覆ナノ製剤は高分子リシンの被覆によって正電荷製剤になっているためと推察された。また、in vivo薬効試験では、担がん動物に葉酸修飾ナノ製剤を静脈内投与して、抗腫瘍効果を評価した結果、未修飾製剤と有意な差は見られなかった。従って、リガンド修飾ナノ製剤は細胞内に受容体を介して取り込まれた後に、細胞内で十分に放出していない可能性が考えられた。

今後の研究の推進方策

今年度は、リガンド修飾リポソームをpH感受性リポソームにして、pHの低い細胞内での放出性を高める。また、葉酸高分子被覆ナノ製剤においては、さらに酸性高分子で被覆することによって負電荷ナノ粒子製剤として体内での安全性を高めることを目標とする。
最終的に、in vitroでのターゲティング能と細胞毒性、in vivoでの治療効果と薬物動態試験より、製剤の総合的ターゲット評価ついて、得られた結果を取りまとめる予定である。

次年度の研究費の使用計画

本研究では、ターゲットナノ粒子の作製のための各種の脂質と、蛍光色素、抗がん薬、実験動物を主に必要とします。葉酸結合ポリLリシンとオクトレオチド結合PEG脂質は外注した。これらの経費を計上します。リポソーム作製に使用する卵黄ホスファチジルコリン、コレステロールやpH感受性脂質等の脂質、各種反応試薬、細胞培養試薬を購入します。
動物実験では、腫瘍ターゲットナノ製剤についての治療効果と体内動態の評価・検討のために担がんマウスを使用する予定にしています。これまでの検討で蓄積されたデータを基に実験を実施する予定にしていますので、約60匹で検討可能であると考えています。
ターゲティング能は蛍光ラベルした脂質を用いてin vivoイメージングで確認する予定です。そのためにin vivoイメージング試薬を購入します。
その他,体内動態の評価のために液体クロマトグラフィー用試薬の購入を予定しています。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Functional coating of liposomes using a folate-polymer conjugate to target folate receptors2012

    • 著者名/発表者名
      K. Watanabe, M. Kaneko and Y. Maitani
    • 雑誌名

      Int. J. Nanomedicine

      巻: 7 ページ: 3679-3688

    • DOI

      10.2147/IJN.S32853

    • 査読あり
  • [学会発表] Functional nanoparticles for cancer chemotherapy2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Maitani, K. Kawano
    • 学会等名
      10th France-Japan DDS Symposium
    • 発表場所
      ボルドー, フランス
    • 年月日
      20121010-20121013
    • 招待講演
  • [図書] Vitamin-Binding Proteins - Their Functional Consequences2013

    • 著者名/発表者名
      Y. Maitani
    • 総ページ数
      229-239
    • 出版者
      CRC Press/Taylor & Francis Group

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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