研究課題/領域番号 |
23590058
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
栗本 英治 名城大学, 薬学部, 准教授 (90234575)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コイルドコイル / バイオ素子 / pH / 輸送タンパク質 |
研究概要 |
酵母輸送タンパク質Emp46pおよびEmp47pにおけるコイルドコイル領域の予測をプログラム「COILS」を用いて行い、バイオ素子のコア候補とするアミノ酸配列(Emp46c, Emp47c)を決定した。両コンストラクトを大腸菌により発現させ各種クロマトグラフィーを用いて精製を行い、得られたサンプルについてゲルろ過クロマトグラフィー、化学架橋法、超遠心分析、CDスペクトル測定など用いて会合状態・構造安定性等の解析を行い、以下の結果を得た。 1.両者は共にαヘリックスに富む構造を形成する。2.Emp46cは1~2量体であるが、Emp47cは4~5量体を形成する。3.中性pHでは両者は速やかに会合し、4~5 merからなるヘテロ多量体を形成する。4.Emp46cの熱安定性は低いが、Emp47cと複合体を形成することにより安定性が大幅に向上する。5.酸性pHでは、Emp46cのヘリックス安定性が高まるとともに、Emp46cとEmp47cの会合体形成が抑制される。6.両者のコイルドコイル内面に唯一存在する酸性アミノ酸残基であるEmp46cのGlu303をAlaに置換した変異体は、ヘテロ会合体形成能を消失する。また、この変異によりEmp46cの熱安定性が顕著に高まる。 このように、Emp46pとEmp47pのpHによる会合状態の制御には、Emp46pのコイルドコイル領域に存在するGlu303が重要な役割を果たしていることが明らかとなり、この残基の電荷がEmp46pのホモ会合体形成を抑制し、Emp47pとのヘテロ会合体形成を促進すると考えられた。 本研究において特定したEmp46pおよびEmp47pのコイルドコイル領域は、それ自体でpH依存的な会合特性を示すものであり、pH応答性バイオ素子のコアとして機能することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Emp46pおよびEmp47pのコイルドコイル領域(Emp46c/47c)を特定することができ、さらにこの領域のみでpHに依存したヘテロ会合体の形成が起こることが明らかとなった。これにより、本研究の目的であるpH応答性バイオ素子開発の基盤を構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究により特定したEmp46p/47pのコイルドコイル領域(Emp46c/47c)にドナー蛍光タンパク質およびアクセプター蛍光タンパク質を融合したコンストラクトを設計し、蛍光共鳴エネルギー移動の観測により、両者の会合状態を計測できるシステムを構築する。 この際、バイオセンサーとしての機能を十分に発揮させるため、ドナー/アクセプターとなる蛍光タンパク質の組み合わせ、コイルドコイル領域と連結するリンカー配列などの最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は主にバイオ素子のコア候補となる配列の抽出およびその基本的な会合特性等の研究を行ったが、24年度は種々の蛍光タンパク質との融合タンパク質を作成し、会合状態の検出に最適となるように多種多様なコンストラクトの設計を行う。23年度において次年度使用予定とした研究費は、各種蛍光タンパク質遺伝子やベクター購入費の一部に当てる予定である。
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