研究課題/領域番号 |
23590059
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
岡本 浩一 名城大学, 薬学部, 教授 (00308941)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | siRNA / 蛍光標識 / 吸入剤 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
モデルsiRNAとしてホタルルシフェラーゼ遺伝子をターゲットとするsiRNA (siGL3) を用いた。近赤外蛍光標識siRNAには、siGL3のセンス鎖もしくはアンチセンス鎖の5’末端を近赤外蛍光指示薬であるCy5.5で化学修飾したもの (Cy5.5-siGL3)を用いた。 非ウイルス性ベクターとしてLipofectamine 2000 (LFN) を使用した。CT26-Luc細胞にsiGL3/LFN溶液を適用した後のルシフェラーゼ活性はsiGL3濃度依存的に抑制された。センス鎖をCy5.5で標識したsiGL3では未標識のsiGL3と同等の効果が得られる一方、アンチセンス鎖をCy5.5で標識したsiGL3では、効果が減弱する傾向が認められた。これは、RNA干渉に直接関わるアンチセンス鎖をCy5.5で標識することで、ターゲットとなるmRNAの認識能が低下したためと考えられる。マウスに経気管的に肺内投与したCy5.5-siRNAの体内動態および肺局在性についてIVISを用いて評価した。Naked Cy5.5-siRNA溶液では投与0.5-1時間後からCy5.5由来の蛍光が肺から肝臓、腸へと移行していくのが観察されるとともに、時間経過に伴い蛍光が体内から消失した。Cy5.5の標識位置は、naked Cy5.5-siRNA溶液の体内動態に大きな影響を与えなかった。一方、Cy5.5-siRNA/LFN溶液では肺内で滞留する様子が確認でき、投与3時間後から肝臓へと移行した。肺局在性については、標識した位置 (センス鎖およびアンチセンス鎖の5'末端)による違いが認められなかった。また、噴霧急速凍結乾燥法で、吸入に適した微粒子製剤を調製できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の目標として、(1)蛍光標識siRNAの開発、(2)その機能評価、(3)標識siRNAを用いたマウス肺組織内動態評価、(4)微粒子の調製を掲げた。(1)蛍光標識siRNAは店専門業者に発注することで、センス鎖もしくはアンチセンス鎖のいずれか一方をCy5.5標識したsiRNAを作成することができた。(2)機能評価としては、CT26-Luc細胞を用いたin vitro遺伝子発現抑制試験を行い、標識位置によりRNA干渉能が異なることを乱すことができた。計画ではマウス肺ホモジネート中での標識siRNAの安定性を検討する予定であったが、時間の関係で遂行できなかった。(3)正常マウスの肺にに標識siRNA溶液を投与し、IVISを用いることでsiRNAの肺組織内動態を視覚的に追跡することに成功した。以上の検討で計画と違う点は、計画ではベクターとして水溶性キトサンを用いる予定であったが、本年度の検討ではリポフェクタミンを用いた点である。これは、基礎検討を進めるにあたり、キトサンより遺伝子送達能の高いリポフェクタミンを用いたためである。(4)吸入特性の優れたsiRNA微粒子を、噴霧急速凍結乾燥法で調製する事ができた。この製剤では、予定通り水溶性キトサンをベクターとして用いた。
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今後の研究の推進方策 |
肺転移がんモデルマウスを用いて、経肺投与された製剤の肺内分布、siRNAの肺組織内動態とRNA干渉能の関連を明らかにし、siRNA微粒子製剤処方の最適化を行う。マウスにCT26/Luc細胞を尾静注し、肺転移癌モデルマウスを作成する。ルシフェリン腹腔内投与後の肺組織中ルシフェラーゼ活性が一定の強度に達したマウスにsiRNA微粒子製剤をシリンジ法により肺内投与する。IVISを用い、製剤肺内分布、siRNA肺組織内動態、RNA干渉能を評価する。RNA干渉能がsiRNA配列特異的に現れているかどうかは、ルシフェラーゼ遺伝子に配列特異性のないRL siRNA製剤投与で確認する。 処方の最適化は次の観点から行う:賦形剤の種類、キトサンとsiRNAの混合比(N/P比)、siRNA含量、緩衝剤の有無及びpH(pHが酸性側に傾くことで、キトサンとsiRNAの複合体が形成されやすくなる)。特に賦形剤については、乳糖、マンニトールに加え高分子を選択し、siRNA徐放性製剤の調製を試みる。また、これまでのsiRNAマウス静脈内投与による遺伝子発現抑制研究では、1回あたり60μg程度の多量のsiRNAが複数回投与されることが多い。当研究室でのこれまでの検討でも、1回あたり60μgのsiRNAを2回肺内に投与してきた。しかし、局所投与では静脈内投与に比べてsiRNAの投与量を減じられる可能性が高く、至適投与量についても検討を加える。 肺ホモジネート中での標識siRNAの安定性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
in vivoでのRNA干渉能を評価するため、マウス購入大で約40万円を予定している。ルシフェラーゼ定量時の発光試薬であるルシフェリン購入に約30万円、その他の試薬・消耗品に約10万円を予定している。関連学会での成果発表のため、旅費・宿泊費に約10万円を、研究成果を論文発表するため、英文校正料、投稿料で約10万円を見込んでいる。
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