研究課題/領域番号 |
23590059
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
岡本 浩一 名城大学, 薬学部, 教授 (00308941)
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キーワード | siRNA / 蛍光標識 / 吸入剤 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
ベクターとして分子量70,000の分岐型PEI (B-PEI)、賦形剤にマンニトール、分散補助剤にロイシンを用いて噴霧急速凍結乾燥法によりsiRNAの吸入粉末剤を調製した。モデルsiRNAとしてホタルルシフェラーゼ遺伝子 (luc+) をターゲットとするsiGL3と、そのセンス鎖の5’末端をCy5.5で化学修飾したCy5.5-siGL3を用いた。Naked Cy5.5-siRNAに比べ、Cy5.5-siRNA/B-PEI複合体では、Cy5.5由来の蛍光強度が約1/10に減弱した。Cy5.5のスルホニル基に由来する負電荷が、B-PEIの正電荷と静電的相互作用を起こすためと考えられる。 雌性ICRマウスに粉末製剤および溶液を肺内投与し、Cy5.5-siRNAの体内動態を近赤外蛍光イメージングにより評価した。B-PEIとの複合体形成によるCy5.5由来の蛍光強度の減弱が認められた。Naked Cy5.5-siRNA粉末製剤および溶液投与群では投与3時間後で肺内のCy5.5蛍光強度が最大となり、その後肝臓、腸などへ移行した。一方、Cy5.5-siRNA/B-PEI粉末製剤および溶液投与群では肺での蛍光強度がより長時間維持した。 CT-26/Luc細胞懸濁液をBALB/cマウスに尾静注し作成した肺転移癌モデルマウスに粉末製剤および溶液を肺内投与した。Control群および配列非特的なsiRL/B-PEI粉末製剤投与群、B-PEI粉末製剤投与群、naked siGL3粉末製剤投与群では肺内発光強度が経日的に顕著に増加した。siGL3/B-PEI粉末製剤投与群ではday1からday3まで肺内発光強度の増加は認められず、siGL3の投与量依存的な遺伝子発現抑制効果が確認された。また、siGL3/B-PEI溶液よりも優れた遺伝子発現抑制効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、肺転移がんモデルマウスを用いて、経肺投与された製剤の肺内分布、siRNAの肺組織内動態とRNA干渉能の関連を明らかにすることを目標として交付申請書および平成23年度の実施状況報告書に記載した。予定通り、①マウスにCT26/Luc細胞を尾静注し、肺転移癌モデルマウスを作成できた。②ルシフェリン腹腔内投与後の肺組織中ルシフェラーゼ活性が一定の強度に達したマウス(通常CT26/Luc接種10日目前後)にsiRNA微粒子製剤をシリンジ法により肺内投与し、IVISを用い、標識siRNAの製剤肺内分布、肺組織内動態、RNA干渉能を評価できた。また、③RNA干渉能がsiRNA配列特異的に現れているかどうかを、ルシフェラーゼ遺伝子に配列特異性のないRL siRNA製剤投与で確認できた。以上より、平成24年度はほぼ計画通り研究を進め、有用な成果を上げることができたと考えてている。予定と異なるのは、ベクターとして当初予定していた水溶性キトサンではなく、分枝型ポリエチレンイミンを用いた点である。これは、基礎検討を進めるにあたり、キトサンより遺伝子送達能の高いポリエチレンイミンを用いたためである。
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今後の研究の推進方策 |
処方の最適化を次の観点から行う:賦形剤の種類、キトサンとsiRNAの混合比(N/P比)、siRNA含量、緩衝剤の有無及びpH(pHが酸性側に傾くことで、キトサンとsiRNAの複合体が形成されやすくなる)。特に賦形剤については、乳糖、マンニトールに加え高分子を選択し、siRNA徐放性製剤の調製を試みる。また、これまでのsiRNAマウス静脈内投与による遺伝子発現抑制研究では、1回あたり60μg程度の多量のsiRNAが複数回投与されることが多い。当研究室でのこれまでの検討でも、1回あたり60μgのsiRNAを2回肺内に投与してきた。しかし、局所投与では静脈内投与に比べてsiRNAの投与量を減じられる可能性が高く、至適投与量についても検討を加える。また、肺ホモジネート中での標識siRNAの安定性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
in vivoでのRNA干渉能を評価するため、マウス購入大で約25万円を予定している。ルシフェラーゼ定量時の発光試薬であるルシフェリン購入に約30万円、その他の試薬・消耗品に約5万円を予定している。関連学会での成果発表のため、旅費・宿泊費に約6万円を、研究成果を論文発表するため、英文校正料、投稿料で約4万円を見込んでいる。
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